「Eメールを送り職場にも復帰」…麻痺患者の自立を導いたBCI、一体どのような技術なのか?

写真=UCデービス・ヘルス提供
▲ 写真=UCデービス・ヘルス提供

【ヘルス朝鮮】BCI(ブレイン・コンピューター・インターフェース)は、人間の脳とコンピューターを接続し、思考(考えていること)だけで機器を制御したり、意思疎通を図ったりできるようにサポートする技術だ。近年、関連研究が活発化しており、全身麻痺(まひ)患者のタイピングや音声合成を支援する水準にまで発展を遂げている。こうしたなか、ルーゲリック病によって四肢麻痺と深刻な構音障害(発音障害)を抱えていた患者が、BCIを用いて再びコミュニケーションを取り、職場復帰(社会復帰)まで果たした事例が公開され、大きな話題を呼んでいる。

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 米国カリフォルニア大学デービス校(UCデービス)の研究チームは、「ルーゲリック病」として広く知られる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者が、BCIを活用することで研究陣のサポートを受けることなく、自宅で長期間にわたり意思疎通を行い、コンピューターを使用することができたという研究成果を発表した。

◇会話の再開からフルタイム勤務の維持まで

 研究の対象となったのは、ルーゲリック病患者である米国在住のケイシー・ハレル(Casey Harrell)さん(47)だ。ルーゲリック病こと筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、脳と脊髄の運動神経細胞が徐々に変性・消失することで、全身の筋肉が衰えて萎縮していく進行性の神経変性疾患である。病勢が進行すると、身体の動きだけでなく、発話(言葉を話す)機能にまで重大な影響が及ぶ。ハレルさんも同様に、四肢の筋力が著しく低下し、構音障害も重篤化したため、通常の意思疎通が極めて困難な状態に陥っていた。

 研究チームは2023年、ハレルさんの左運動野(運動皮質)の領域に、実験用のBCIデバイスを植え込む手術を施行した。計256基の微細電極が、患者が話そうとしたり動かそうとしたりする際に発生する神経信号(脳波)を記録し、人工知能(AI)ベースの解読アルゴリズムがこれをテキストやコンピューターのコマンド(命令)へと変換する仕組みだ。その結果、ハレルさんは麻痺状態であるにもかかわらず、Eメールやテキストメッセージを送信し、インターネットを閲覧(検索)できるようになった。これにより、知人らと自由に対話できるようになったばかりか、フルタイム(全日制)での勤務も維持することに成功した。ハレルさんはBCIを通じ、「これまでに経験したどのテクノロジーよりも自然なアプローチで意思疎通ができる。幼い娘が覚えていない私の『声』を、再び聞かせてあげられるようになったことも大きな喜びだ」と語った。

◇研究室の壁を越えて実用化されるBCI技術

 ハレルさんは、約2年間にわたり自宅でBCIを3800時間以上使用した。この期間中に計18万3060の文章と、196万163の単語を生成し、平均的な意思疎通の速度は1分間あたり56単語であった。これは一般的な成人の平均的な会話速度(1分間あたり120-160単語)よりは遅いものの、通常のキーボードタイピング速度(1分間あたり30-50単語)と比較すれば、極めて高い水準である。彼が生成した文章の92%は「正確」または「ほぼ正確」であると評価された。画面に提示された単語を音読させる別途の性能評価では、99%以上の単語認識精度を記録している。

 研究チームは、今回の成果の意義について、高い精度そのものよりも「日常生活の現場において、自立して使用できる点」にあると説明する。UCデービスの脳神経外科専門医であるデビッド・ブランドマン教授は「従来のBCI研究は、その大半が研究室の環境内に限定され、常に研究陣のサポートを必要としていた」とした上で、「今回の研究は、麻痺を抱える患者が自らの意思で自立的なコミュニケーションを図れることを証明した重要な転換点(マイルストーン)だ」と評価した。

 研究チームは、今回の結果がルーゲリック病だけでなく、脊髄損傷や脳卒中の後遺症などによって意思疎通に困難を来している患者のQOL(生活の質)の向上に大きく貢献すると期待を寄せている。最近では、イーロン・マスク氏が設立した脳神経科学スタートアップ「ニューラリンク(Neuralink)」をはじめ、多くの研究機関や民間企業がBCIの開発に本格参入している。今回の研究のように、実際の生活環境で活用できる事例が蓄積されることで、関連技術の発展スピードは今後さらに加速するものと展望されている。

 ケイシー・ハレルさんの事例を詳細に分析した研究論文は、国際的な学術誌「ネイチャー・メディシン(Nature Medicine)」に掲載された。

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チェ・スヨン記者
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