全州映画祭:『トイレのピエタ』主演・野田洋次郎インタビュー

「情熱が息づく場所、それはトイレ」
余命宣告された元美大生・宏役
女子高生・真衣との交流通じ、絵を描くことに人生の意義見いだす
ロックバンド「RADWIMPS」ボーカル「熱狂的な韓国の観客に驚いた」

全州映画祭:『トイレのピエタ』主演・野田洋次郎インタビュー

 今年の全州国際映画祭(4月30日-5月9日)では、日本映画『トイレのピエタ』(松永大司監督)が予想外の人気を集めた。3回の上映すべてで監督・出演者が「観客との対話」時間を設け、そのたびに女性ファンが詰めかけて主演の野田洋次郎(29)を取り囲みサイン攻めに合わせた。野田は日本の人気ロックバンド「RADWIMPS」で作詞・作曲・ボーカル・ギターを担当するロックミュージシャンだ。昨年5月、同バンドの韓国初公演チケットはインターネットの前売りだけで完売した。5日に全州市内で会った野田は「熱狂的な反応に僕たちも驚いています。ライブの時の韓国人ファンの情熱を思い出します。『ああ、本当にまた韓国に来たんだなあ。すごくうれしいし、ありがたい』と思いました」と語った。

 絵を描くことに人生をかけた美大生だったが、夢をあきらめて高層ビルの窓ふきをして暮らしている園田宏(野田洋次郎)。胃がんで余命3カ月と宣告され、人生最後の夏を迎える。誰一人頼る人もいない東京で、彼の体と心が壊れそうになった時、ひょんなことから知り合った女子高生・宮田真衣(杉咲花)と知り合い、それをきっかけに宏は最後の力を振り絞ってトイレの壁や天井に絵を描き始める。一見すると日本映画の中にありがちな題材だが、映画は「芸術は人間を無意味から救える」という重く古いテーマに向かって軽やかに、そしてスピーディーに展開していく。

 この映画が持つ軽快さには妙な説得力がある。映画初出演ながら彼のために書かれた役であるかのようになじんでいる野田の存在が大きい。「撮影中は本当にがん患者のように物を食べられませんでした。家で一人の絵を描いて泣いたり…。『僕は本当にがんなのでは』『こんなことしていたら死んでしまうのでは』と思いましたよ。神秘的でいとおしい経験でした」。

 狭いトイレの中で体を縮め、取り憑かれたかのように絵を描く終盤の一連のシーンは印象的だ。主人公の宏は「トイレに絵を描くのは、誰もが浄化と恍惚(こうこつ)を感じる場所だから」と言う。死にくじけることなく自身の情熱を燃やす宏にふさわしいセリフだ。「映画を撮る前は知らなかった漫画家の手塚治虫さん(代表作:『鉄腕アトム』など)が『トイレの中に宇宙がある』と言ったという話を聞き、鳥肌が立ちました。誰も長短の差があるだけで、生まれながらにして死を宣告されるものだと思います。余命3カ月の人生が無意味なら、僕たちの人生も無意味じゃないですか。誰にでも自分の情熱を燃やす『どこか』が必要なのでは」。

 野田は最後に「全州で映画を見た韓国のお客さんが『実は私も病気で余命わずかと言われた。映画を見て、今からでも私のピエタを探そうと決心した」と言ってくださった時が一番うれしかったです。韓国の観客の皆さんの情熱に感謝します。誰かにとってそうした希望なれたなら、僕たちの映画の意味も十分伝割ったと思います」と語った。この映画は6月に日本で公開されるが、韓国での公開は未定だ。

李泰勲(イ・テフン)記者
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