「韓国ナンバーワンの映画投資・配給会社CJ E&Mには100億ウォン(約7億円)というジンクスでもあるのだろうか」
映画界関係者たちが最近抱えている疑問だ。同社が100億ウォン以上投資した映画『R2B:リターン・トゥ・ベース』(以下『R2B』)が興行に失敗したのが直接のきっかけ。映画振興委員会によると、先月15日公開の『R2B』は10日現在で観客113万人を動員しているという。このままでは損益分岐点350万人の半数にも及ばないまま、映画館から消える可能性が高そうだ。
このところCJ E&Mの「100億ウォン大作興行失敗」が続いている。2010年12月に公開された『ラスト・ゴッドファーザー』や昨年8月公開の『第7鉱区』、12月公開の『マイウェイ 12,000キロの真実』も興行的に成功していない。総制作費130億ウォン(約90億円)の『第7鉱区』は224万人、300億ウォン(約21億円)の『マイウェイ』は213万人が入場したが、損益分岐点には前者が120万人、後者が700万人足りなかった。このように最大手の映画投資・配給会社が100億ウォン以上かけ、夏・冬の興行シーズンを狙って制作した「テントポール(会社の屋台骨を支える)作品」が興行に失敗したのを受け、関係者の間では「韓国映画界という大きな目で見ると、ほかの映画投資会社も大作の制作をためらうようになり、結果的に韓国映画の発展に悪影響を及ぼすといった波紋が懸念される」と話している。このように韓国映画界全体を憂うつにさせるCJ E&Mには、一体どのような問題があるのだろうか。
■脚本・登場人物像でなくテクニックが売り
韓国の商業映画1本当たりの平均制作費は約40億ウォン(約2億8000万円)。100億ウォンあればトップ・クラスの出演者や監督を起用するのに十分で、宣伝費だけでも中小程度の作品の総制作費に匹敵する。1200万人以上の観客を動員した『泥棒たち』(総制作費150億ウォン=約10億円)や、昨年の興行成績1位『最終兵器 弓』(90億ウォン=約6億2000万円)は実際にそれだけの成績を残している。
しかも、CJ E&Mは「CGV」という系列映画館配給網も持っている。『R2B』は封切り初日から7日目までずっと興行成績4位だったが、この期間中の上映回数は3位『トータル・リコール』に比べ1日平均100回以上も多かった。
これだけ有利な条件を多数そろえているのにCJ E&Mの興行成績が振るわないことについて、映画評論家カン・ユジョン氏は「CJ E&Mの最近の大作を見ると、脚本や登場人物像の完成度といった基本的な要件ではなく、出演者のスター性や話題性に依存している気がする。『第7鉱区』の3Dや『R2B』の航空機撮影などのように、そうしたことをすれば観客が喜ぶとでも勘違いしているようだ。見せ場はハリウッドの技術力だけだろうか。そうしたことをよく知る近ごろの観客を取り込むのに失敗したということ」と話す。
「作品に合わない監督を選んでいるのも問題」という指摘もある。ある映画投資会社の関係者は「映画のジャンルで言えば『ヒューマン・ドラマ』に属する『光州5・18』を手掛けたキム・ジフン監督に3Dサスペンスの『第7鉱区』を、『マイ・ボス マイ・ヒーロー2リターンズ』『遺憾な都市』などのコメディー映画を作り続けてきたキム・ドンウォン監督に韓国初の航空アクション映画『R2B』を任せたのは、専門家の視点からすれば明らかな判断ミス」と語った。
■内部の意思決定構造にも問題?
「CJ E&M内部の意思決定構造に問題がある可能性がある」という声もある。同社と仕事をした経験がある制作会社代表は「映画のような文化商品は個人の創造性やビジョン、趣向を強く反映すべきなのに、CJ E&Mは官僚主義が強い企業風土という印象を受けた。組織力と創造性のバランスが取れていない。決裁過程が複数段階あるため、いろいろな人の好みに合わせるうちに観客にアピールできる部分が切り捨てられていくケースがあったが、そうしたとき、『直言』できる人もいないようだった」と語った。CJ E&Mの元関係者も「在職時は制作実務に関する決定権限があまりにも『上』にばかり集中しているという思いが消せなかった」と話した。
だが、ある映画制作会社代表は「韓国のテントポール作品はまだ過渡期にあるため、システムもデータも全くない。(平均制作費が)30億-40億ウォン(約2億1000万-2億8000万円)の映画を安定して作るのに10年かかったのだから、もう少し見守るべき」と語った。
卞熙媛(ピョン・ヒウォン)記者