今年の秋夕連休(チュソク=中秋節、今年は9月12日、連休は11‐13日)をターゲットに公開された映画で、期待作の一つが『青い塩』だ。その最大の理由は、演技力とスター性で今や「国民的俳優」と言われるソン・ガンホの主演作だからだ。
この映画は少し前に封切られたが、観客の反応ははっきりと二つに分かれている。「最近では珍しいスタイリッシュな映画」と絶賛する声があるかと思えば「ストーリーが弱く、つかみどころがない」という酷評もある。先週末の興行成績では『最終兵器 弓』に次ぐ2位。ヒットでもコケでもない中途半端な公開第1週の観客数(45万人)が、『青い塩』をめぐる論議をそのまま反映している。
しかし、主演ソン・ガンホの演技についていえば、意見の相違は全くないと言っていいほど「好評」一色だ。ソン・ガンホが演じた暴力団の元ボス「ドゥホン」は、平凡な暮らしがしたいと組織を去った人物。ドゥホンは料理学校で若い女「セビン」(シン・セギョン)と知り合い恋に落ちるが、セビンはドゥホンを監視し、殺そうとする。危険な状況と愛という感情の境界線上に立っているドゥホンをリアルに演じ、観客からも評論家からも絶賛されているソン・ガンホがインタビューに応じた。
-今回は恋愛映画だ。ヒューマンドラマやコメディーの方が得意そうだが。
「出演した映画のうち恋愛映画と言えるものは『シークレト・サンシャイン』『渇き』『青い塩』くらいでは。それぞれ愛の形は異なりますが、中でも『青い塩』は一番日常的で大衆的な愛の映画だと思います。これで『恋愛3部作』ができたので、もう恋愛映画に出るつもりはありません」
-恋愛物で自分の演技を見るとどんな感じ?
「恥ずかしい気もするし、観客がざわつくのではと心配にもなります。幸いなことに女性ファンからは『女心を揺さぶる』と言われました(笑)。私の口から話すのはとても気まずいよね。まぁ、女性が喜んでくれるのだから(結果としては)いいんでしょう。(どの映画を見るか決めるとき)男性はついて行くしかないから」
-初めて台本をもらった時の印象は?
「構成や構図が斬新でした。若い女性との愛を描く映画に『レオン』がありますが、全く違う感性だと思いました。イ・ヒョンスン監督のスタイリッシュな演出も楽しみでしたし。いろいろ気になったり、怖い気もしました」
-怖いというのはどういう意味? 40代半ばなら怖いという気持ちもなくなる年齢では?
「新しい作品はいつも怖いです。今も、来年撮影する『雪国列車』(ポン・ジュノ監督の新作)をどう演じるか心配しています。ヒットや成功が保証されている台本よりも、不安がありながら魅力的な映画の方が好きですが、それに関する怖さもありました。『青い塩』はそんな映画でした」
-しかし、スクリーンではいつも自信があるように見える。
「恐怖は乗り越えるしかありません。怖さは一度ではなくならない。結局、俳優にとって一番重要なのは自信ですが、酒を飲んだからといって自信が生まれるわけではありません。撮影まで常に自信を少しずつ積み重ねていくだけ。あすポン・ジュノ監督に会うのですが、話していくうちに0.1ミリの自信が生まれ、またそうやってどんどん重ねていくのです」