コン・ユ(32)が渋みを増している。大ヒットドラマ『コーヒープリンス1号店』でブレークしたときは「ソフトでロマンチックな男」というイメージがしばらくついて回った。だから、コン・ユがファン・ドンヒョク監督の映画『るつぼ』(22日公開)で正義のために戦う子持ちで独り者の男という役を引き受けたとき「意外だ」という声が上がった。
実際の事件を基にした孔枝泳(コン・ジヨン)の同名小説を映画化した『るつぼ』は、見ていて気分が爽快(そうかい)になる映画ではない。聴覚障害者の学校に赴任した美術教師カン・インホ(コン・ユ)は、校長や教師が子どもたちに対し常習的に性的暴行、わいせつ行為を働いて虐待していることを知り、人権活動家ソ・ユジン(チョン・ユミ)とともに子どもたちを救うため立ち上がる。コン・ユは今回、静かで落ち着いた目と抑えた動きで役の真摯(しんし)さを見事に表現したと高く評価されている。
7日、ソウル市鍾路区のカフェでコン・ユに会った。「もともとあまりひげをそらない方なんです」と言い、鼻の下とあごにひげを生やしたままやって来た。
-今回の役選びは意外だった。
「いえ、意外ではありません。もともと持っていた映画的な観点や考えとはそれほど離れていない選択です。兵役中、兵長だったときに原作小説『るつぼ』を読んで、知人を通じ作者に映画化する意向があるかどうか聞きました。それで『僕はカン・インホ役がやりたい』と意思表示しました」
-一般人が持っている「ロマンチック・ガイ」というイメージは本当の自分ではない?
「僕の一部であることには間違いありません。もともとロマンチック・コメディーが好きだし。でも、そうしたイメージは役柄や監督の力で作られたものです。そこまでロマンチックではありません」
-これまでと全く違う役を演じるのは簡単でないと思うが…。
「これまで生きてきた中で、大きな曲折はありませんでした。そういうことを考えると、今回の役は挑戦です。情熱とやる気をもって挑みましたが、簡単ではありませんでした。意外だと思う人も、うまく演じきれるのかと疑う人もいました。実は僕自身もヒヤヒヤしていました」
-出来上がった作品に満足?
「『これぐらいなら上出来』と考えるのは軽率だと思います。ただ、試写会で見たら、観客の皆さんが共感してくださった様子でした。すすり泣く声、ため息、『あの野郎』という声まで聞こえました」
-衝撃的な事件を取り上げ、そのテーマの重さに「映画を見るのがつらい」という声もある。撮影時はどうだった?
「とても集中していて、必死でした。でも、つらいという気持ちはありませんでした。ところが、試写会で観客の皆さんと一緒に映画を見て初めて『見るんじゃなかった』と思うほどつらくなり、気持ちが沈みました。子どもが転んだとき、一人だと泣かないけれど、母親が駆け寄ってくると泣き出してしまうような…。観客の皆さんと気持ちを分かち合い、感情が込み上げてきたのだと思います」