「これからは穏やかに過ごしたいです」 チェ・ジンシルさんは亡くなるまで、記者と時折電話でやりとりしていた。最後に電話で話したのは1日。チェ・ジンシルさんは落ち着いて淡々とした声で語った。最後のインタビューでも、彼女は作品に対する希望や情熱を失っていなかった。
チェ・ジンシルさんは「今年は年末にドラマ『人生最後のスキャンダル』シーズン2の撮影があります。このドラマでもう一度演技に没頭したいです」と固い意志を語っていた。 だが、電話で話していた間ずっと、彼女の声は憂いを含み、沈んでいた。「チェ・ジンシルは自殺したアン・ジェファンに25億ウォン(約2億2000万円)を貸していた。名義上の社長を立て、その裏で貸金業を手がけている」といううわさが最近飛び交い、悩まされていたためだ。
チェ・ジンシルさんは「芸能人がうわさに苦しめられるのは、どうしようもない宿命のようなものです。わたしも19年間うわさに苦しめられてきました。それでも今回のうわさは度が過ぎていると思います。傷つくのがわたしだけならまだ許せますが、今回のうわさで(アン・ジェファンさんの妻でタレントのチョン・)ソニや、アン・ジェファンさんの関係者が取り返しの付かないほど傷ついています。本当に穏やかに過ごしたいのに、世の中というのは自分の思い通りにいかないものですね」と語った。
「健康上の問題は?」と尋ねると、チェ・ジンシルさんは明るい声で「大丈夫です。いつもプラス思考で生きようと頑張っていますから。子供たちのためにも、病気になっている暇はありません」と笑う余裕も見せた。
しかし、うわさが流れたことで、後輩のチョン・ソニに申し訳なく思っているという。「ソニがつらい思いをしているとき、寄り添って手を握ってやることもできなくて申し訳ないと思っています。もしかしたらまた、新たなうわさが立つのではないかと思うと、そばにいてあげられないのです。だから、子供たちと家から出ずに静かに過ごしていました。息苦しくて、とてもストレスがたまりました」と涙声になった。
記者が「来月の青龍映画賞授賞式には是非姿を見せて」と頼むと、チェ・ジンシルさんは「今年映画に出たわけではないので…もし来年映画に出たら、次の授賞式には必ず出席しますよ」と努めて明るく答えていた。
チェ・ジンシルさんは電話の終わり際になると、いつも前向きで優しい言葉をかけてくれた。「わたしのせいでご苦労なさっているんでしょ? 世の中が静かになれば、焼酎でも一杯飲みましょうよ。本当に楽な気持ちで人生についていろいろ語り合いましょう」と言い、笑い声を聞かせてくれたのが最後だった。
イ・ヘワン記者