ソン・ガンホが戻ってきた。新人俳優たちが「尊敬する俳優」として話する時、必ず名前が挙げられる俳優。自他共に認める俳優ソン・ガンホが、漢江に突然現れた怪物と共に今年の夏、スクリーンに現れる。1996年に上映された映画『豚が井戸に落ちた日』に出演し、映画デビューを果たした彼は、今年で10年目を迎える。数多くの作品に出演してきたベテランの彼が、『グエムル-漢江の怪物-』の公開(7月27日)を目前に控え、緊張と興奮が抑えられないように見えた。
★「息がつまりそうだ・・・」
カンヌ映画祭をはじめ、賞賛の言葉が惜しまれなかった『グエムル-漢江の怪物-』。公開日を目前にして、その期待感が高まる中、その主人公が不意に「息がつまりそうだ」という言葉を吐き出した。「今からは評論を書かれたり、批判されたりすることしか残っていないじゃないですか。あまりにも映画に対する期待度が高くなっているので、一方で緊張しているのも事実です。」しかしソン・ガンホは、アクセントが強い特有の話し方で、自信ありげな様子を隠そうとはしなかった。「でも(映画に対して)自信はあります。3年という長い年月をかけて育ててきたものだけに、完成度が高い作品だと自負しています。」
★信頼
独特のテーマと特殊効果を使用した映画。この理由から企画段階から『グエムル-漢江の怪物-』について憂慮する声がなかった訳ではない。しかしソン・ガンホは、3年前に同映画の出演依頼を受けた際、すぐにOKと答えた背景には、ポン・ジュノ監督に対する信頼感が大きかったからだ。ポン監督が手がけた映画『フランダースの犬』を印象深く見たというソン・ガンホは、映画『殺人の追憶』で、監督と一緒に仕事をしながら、ポン監督に対する絶対的な信頼感を持つようになったという。
このようにソン・ガンホは、1度信じれば最後まで信じ続けるスタイルだ。このためなのかソン・ガンホは自身が表現したように「最高の監督履歴」を持つ幸運な人物だ。彼の手帳を見ると、ハン・ジェリム、パク・チャヌク、キム・ジウンなど今を時めく有名監督たちとのスケジュールでいっぱいだ。
★挑戦は自分の力
海千山千の経験を持つソン・ガンホだが、不慣れなジャンルへの挑戦はやはり相当苦労したようだ。
「泥水の中を走ったり、転げ回ったりするのは大したことじゃなかったんですが、怪物がいないのに、怪物がまるでその場にいるかのように演技するのが本当に大変でした。」
しかしソン・ガンホは、いつも新しいものに挑戦することを楽しむ。「楽な役だけを演じるような俳優にはなりたくない。創造は俳優の仕事じゃないですか」刑事役を演じた『殺人の追憶』で、大げさに体を動かした彼は、今回の映画のため髪の毛を金髪に染めるアイデアを出したという。所々が色あせてぼさぼさの金髪姿、無力な市民パク・ガンドゥのキャラクターは、まず髪の毛の色から挑戦的に表現されたのだった。
★家族
ビョン・ヒボン、パク・ヘイル、ベ・ドゥナなどとはこれまでの作品でも共演したことがある間柄だ。それもあって今回の作品では、抜群に息の合った演技を見せた。「もともと親しかったのもあるんですが、撮影が進んでいくうちに、次第に本当の家族のように顔かたちまで似てきたように感じました。特に怪物に拉致された娘役を演じたコ・アソンが15歳なんですが、自分の息子が11歳なんですね。だから本当に自分の娘のように感じ、切実な父親の心情をうまく演じられたように思います。『グエムル-漢江の怪物-』は、絶対に単純なSFモンスター映画ではありません。家族愛が込められた映画なんです。家族全員が見て良かったと思える映画として、積極的に推薦したいです。」