「冬ソナ」観光トラブルで日本メディアが強い関心

 東京特派員の崔洽(チェ・フプ)です。

 日本で高い人気を誇ったドラマ『冬の恋歌』(日本タイトル『冬のソナタ』)の主演女優、チェ・ジウさんに会うツアーに参加して韓国を訪れた約200人の日本人ファンが、実際にチェさんとは会えなかったという事実が日本のメディアを通じて大きく伝えられました。

 日本での報道によれば、このトラブルは韓国の某旅行会社が日本のJTBと共同でチェさんに会うツアーを企画したことから端を発しました。今月15、16日にかけて約220人の日本人観光客が、通常3日間で2~4万円程度の韓国ツアーに約2倍の8万円を支払って参加したものの、実際に旅行本来の目的であるチェさんに会うことができなかったというものです。

 実際のところは、旅行会社がチェさん側との事前調整を行わずにツアーを強行したようです。チェさんはドラマ撮影のスケジュールが過密で抜け出すことができず、日本経済新聞はロケ地まで訪れて「ただ遠くから眺めるためにやって来た」日本人観光客のことを伝えていました。

 当然、日本人観光客からは不満の声が噴出しました。日本側の旅行会社「JTB」は旅費の全額を返還する方針です。もちろん韓国の旅行会社に責任を問うのは確実と見られます。

 朝日新聞は17日付けの社会面で、毎日新聞も同様に社会面で今回のトラブルを大きく伝えました。毎日は記者が同行取材を行ったようです。日本経済新聞も18日付けの社会面で同様の記事を扱いました。

 実際に主要日刊紙の第一社会面は、その日にその国の社会で起こった最も大衆的な話題を記事にするのです。ほぼすべての主要日刊紙が大きく報道したということは、それだけ今回のトラブルが日本人であれば誰もが共感する話題として判断されたのでしょう。

 もちろん、これだけ大きく扱われたのは、日本側の旅行会社が最大手のJTBだったことや、女優に会いに行くツアーなのに実際には女優に会えなかったという根本的なミスを犯した点も大きく作用したようです。しかし、基本的には昨年ブームを巻き起こした「冬ソナ」人気が、予期せぬところでトラブルを起こしたといった点で話題を集めたようです。つまりは有名税を支払う形となったわけです。

 日本の「韓流」(1990年代末から東南アジアで始まった韓国大衆文化ブーム)とでも言いましょうか、韓流というよりは単純に韓国ドラマブーム、もう少し正確に言えば「冬ソナ」ブームを取り巻く日本の視点はちょっと複雑です。

 本来「韓流」以前には日本ブームがあったといいます。日本文化は1980年代初めに中華圏を中心にアジアを席巻しました。今、中華圏の若者たちが韓国の芸能人に強い関心を示しているように、当時は日本の芸能人に夢中になったといいます。

 そうした状況で「韓流」が日本ブームを圧倒するようになりました。日本メディアは今も「理解できない」といった記事を書いています。もちろん、頻繁に載るような記事ではありませんが、中華圏での韓流を扱う記事には「歌もドラマも日本の方が洗練されているのに、なぜ韓国の方が人気があるのかわからない」という嘆きが込められています。

 もちろん、実際に日本の歌やドラマを見るとそうでもありません。日本人はすでにアジア人の考え方や表現方法からはかけ離れた暮らしをしていると考えるのが妥当ではないかとも思えます。

 『シュリ』などの韓国映画が大ヒットすると、「韓国は政府の政策で映画産業を育てているから」といった分析が多くされます。日本の文化芸術人が普遍的に持っている韓国文化への偏見は「韓国は政府が集中的に文化を支援しているからいい作品ができる」といったものです。

 ですが、ドラマまで「政府支援論」で片付けるのは難しかったようです。

 その次には「郷愁論」が登場しました。韓国ドラマは日本の昔を思い出させ、「郷愁」を誘ったために大ヒットにつながったという論理です。『冬のソナタ』が大ヒットした当初はこうした見方が大勢を占めていました。

 それを慢心と言っていいのかわかりませんが、日本人のこうした「留保的」理解は、最近の日本文化開放を前に多少の誤算も生みました。

 日本人の大部分は日本文化が開放されれば韓国で相当の反響があると考え、テレビや新聞でも大きく扱いました。私もこの問題について意見を聞かれ、日本人記者や知人に「思ったよりも大きな影響はない」と伝えましたが、日本人の反応は「信じられない」といったものでした。それだけ日本人は自分たちの文化商品の競争力に疑いを持っていないという話です。

 ところが、この『冬のソナタ』が単なる「郷愁」では説明できないほどの大ヒットになったのです。

 単にNHKの視聴率が高かっただけではありません。トーハンの集計によれば、ドラマの関連書籍が昨年の日本の文芸書で年間4位を記録しました。CDも爆発的に売れました。昨年1年間のインターネットのキーワード検索で芸能関連の6位に入りました。

 東京新聞は昨年の日本放送界の10大ニュースに「韓国ドラマの大ヒットと日本ドラマの不振」を挙げました。


 予想以上に人気が高まると、日本ではこのドラマを再評価しました。日本にはない「純愛」を示したということです。日本のトレンディードラマは男女が簡単に出会い、簡単に別れますが、切ない感情を描いた韓国の純愛物語が大受けしたということでしょう。

 日本では韓国の純愛路線と日本のキャラクター重視路線を比較する分析も出ています。結局、「純愛」は韓国ドラマを説明するキーワードになったわけです。そのほかには、俳優の演技が日本ドラマより安定している、恋愛での「礼儀」と「節度」を示している、などの評価があります。

 こうした雰囲気が最高潮に達した時に発生したのが今回の事件です。

 朝日新聞は「韓国の俳優や歌手に会えるとうたったツアーは多いが、このようなことは珍しい」と偶然の「ハプニング」であることを強調し、ドラマブーム自体に対する批判的な報道ではなかったことは不幸中の幸いでした。

 しかし、これからは韓流ブームに対して「甘い評価」はないという予告と思っていいかもしれません。「これからが本番」という言葉は常套句ではありますが、この場合ではぴったりではないかと思います。

東京=崔洽特派員 pot@chosun.com

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