ドキュメンタリー『環境の逆襲』の朴チョンフンPD

 ふらついた足取り、無表情な顔、虚ろな目…。作品ごとにブームを巻き起こし、韓国人の生活文化を根底から覆したSBSの朴チョンフン(42) プロデューサーは、第一印象からして“聡明さ”の感じられる人ではない。

 しかし、彼の“真価”を見抜くには長い時間を要しない。「人生の基本に迫る内容で世の中を変える」という抱負を強い口調で語る姿は、早老の若者たちをはっとさせるだけのものがある。

 「今まで探求してきた“生命の尊厳性”という素材の延長線上にあるドキュメンタリーを企画しています。環境に対する人々の認識を画期的に変えるきっかけを作りたいです」

 朴プロデューサーが2003年の一年を投じて制作する作品は『環境の逆襲』。異常な消費構造によって変えられた環境が、さまざまな経路で人間を攻略する過程を描く。

 だが『生命の奇蹟』、『よく食べて元気に暮す方法』などの代表作と同じく、彼の焦点は実現可能な代案提示に絞られている。

 セットを作って完璧な無公害食品を直接生産してみるという“壮大”な計画がその柱となる。

 「牛や豚も育てて、小麦もコメも栽培してみようと思います。無公害の状態を維持しながら経済的打算まで考慮し、我々の社会に根付くことのできるモデルを提示するというものです。前作が消費者を変化させようとしたものであったら、今回は生産者の認識にも刺激を与えようというものです。

 昨年の年明け早々、『よく食べて元気に暮す方法』で全国民に菜食ブームを巻き起こした朴プロデューサーは、その後10ヶ月間『それが知りたい』チームに所属し、関心の矛先を変更したかに見えた。だがこれは“充電期間”だったことが判明した。

 『すべてのものは土の中にある』、『奪われた未来』、『生命と農業』など、環境関連の書籍およそ50冊を読破し、暇を見ては新企画に没頭してきた。まだこれから200冊あまりを読み、米国・英国・豪州・ドイツなどを周り、専門家を取材しなければならない。

 会社が提供した1年の“自由時間”は、ずしりと重く肩にのしかかる。『環境の逆襲』は2004年初め、韓国人の生活にどのような波紋を投げかけるのか。

 「もう物議を呼びたくはありません。“ショック療法”なんて前近代的でしょう。理性的な判断が具体的な実戦に結び付く新しい方法を模索中です。『生命の奇蹟』以来、8%以上落ちた帝王切開率が再び上昇に転じたという話を聞いた時の失望は、言葉では言い表せません」

 朴プロデューサーが生命と環境にこだわる理由は単純だ。韓国人の誤った生活習慣がもたらす問題点を、体験を通じて痛感したためだ。

 歪んだ出産文化にメスを入れた『生命の奇蹟』は“無知な父親”としての痛恨の懺悔録だったという。『よく食べて元気に暮す方法』は、肉を主食同然に食べていた家庭の食卓への反省から出発した。

 制作に入る前、家族と野菜中心の食事を実戦していた朴プロデューサーは、1年で持病の心臓病を完治させ、小学校6年の娘もアレルギー性鼻炎、ぜん息がなくなった。

 韓国ではドキュメンタリー・プロデューサーは厳しい環境にある。視聴率を取れない番組に冷たいテレビ局の風土が最大の壁だ。これに対する朴プロデューサーの力強い反論が頼もしい。「経済的な面から見れば、競争力は落ちるかもしれません。でも、きちんと作られたドキュメンタリーが及ぼす社会的な波及効果は、数値に換算できるものではありません。

果敢な投資が求められているのです」

チェ・スンヒョン記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c)Chosunonline.com>
関連ニュース