俳優ポン・テギュ(36)は終始真剣だった。表情は淡々といていて、声は落ち着いていた。3月22日に放送が終了したドラマ『リターン』(SBS)の極悪無動なハクポムや、過去の作品で演じた茶目っ気のあるコミカルなキャラクターの姿は見当たらなかった。

 「芸能人ポン・テギュです」。ソウル市麻浦区のカフェで3月23日、ポン・テギュはこう自己紹介した。「あるときから『芸能人』という呼称がぞんざいに扱われている印象がある。僕も一時は『芸能人ではなく俳優になる』と言っていた。けれど考えてみると、歌手であれ俳優であれ、みんな芸人ではないか。間違ったイメージを自分から変えていこうと、敢えて芸能人という言い方をしている」

 『リターン』で分別のない御曹司ハクポム役を演じたポン・テギュは、この作品で「ポン・テギュの再発見」と好評を博した。同ドラマでハクポムは、ずっと年上の相手に対等な言葉遣いでくってかかったり、気に入らないという理由で従業員の頭にガラスのコップを叩きつけたりした。パク・チニ(16話まではコ・ヒョンジョン)、シン・ソンロク、パク・ギウンなどと共に番組を引っ張ったが、腹を立てると子どものようにひっくり返って奇声を上げる熱演ぶりに、「ポン・テギュが本当の主役」という声もあった。

 「ハクポムはこれまでのドラマに出てきた悪役とは少し違う」とポン・テギュは言う。「サイコパスのような悪ではない。財閥一家の御曹司として育ち、日常の暴力性を体得した人物。誰に対しても敬語を使わず、障害者向けの駐車コーナーに平気で駐車したり。自然と表現するため努力した」

 2000年の映画『ティアーズ』でデビューし、ドラマ『ノンストップ』(MBC)などで個性あるキャラを演じて愛されたが、映画『クァンシクの弟クァンテ』(2005)、ドラマ『ワーキングママ ~愛の方程式~』(SBS、2008)以降の10年間は空白だった。「個人的によくないことがあった。家でMBCのバラエティー番組『無限挑戦』を見ながら、やることもなく時間を過ごし、やたらと物も書いた。本も出したし」

 15年に写真家のハシシ・パク(35)=本名パク・ウォンジ=と結婚し、息子シハ君をもうけた。ある芸能番組で、ポン・テギュは「家事は手伝うものではなく、一緒にやるもの」という「所信」を表明し、注目された。休んでいる間は息子の面倒を見たり、家事をしていた。「ドラマを撮影する3カ月間、育児を妻に任せた。(撮影が)終わってまた子どもの面倒を見るようになったら、シハは僕が分からない話や行動をしていた。すごく残念だった」

 ポン・テギュは近々、バラエティー番組『ハッピーサンデー』(KBS第2)の人気コーナー「スーパーマンが帰ってきた」に出演する。家族がテレビに出ることへの負担はないのだろうか。「シハに、テレビに出たいかと何度か尋ねると『出たい』と答えた。『嫌』という答えは一度もない。子どもの意見が一番大事なので、従うしかない」。ポン・テギュは息子の話をするとき、初めて笑みを浮かべた。

 どういう父親になりたいか尋ねると、ポン・テギュはためらうことなく答えた。「いい夫になることが、いい父親になる道だ。今回のドラマに出演し、妻に自慢できるものができたことが一番うれしかった。妻にほめられるのが一番いい。いい作品で味のある演技を見せ、誇れる夫になること。それが、ポン・テギュの人生最高の目標」

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