イ・ジョンソク(24)が金髪に染めた頭を下げてあいさつしたとき、女子中学生の日記帳の1ページをこっそり盗み見てしまったかのような気持ちになった。白い肌にきゃしゃな顔、少女漫画の主人公のような金髪。早熟な女子中学生はイ・ジョンソクのような少年のことを日記に書き、空想にふける。昨年は出演ドラマ『学校2013』と『君の声が聞こえる』がヒットし、10代の少女から主婦まで幅広い層の女性たちの空想にイ・ジョンソクが登場したことだろう。

 そんなイ・ジョンソクが22日公開の映画『血沸く青春』(イ・ヨンウ監督)で、1982年の忠清南道を舞台に、女好きの農業高校生ジュンギルを演じる。ジュンギルは『君の声が聞こえる』や映画『ノー・ブレッシング』で演じた人物のようにカッコいいところはないが、高校生のくせに「お前みたいにひじが白い女は初めて会ったぜ」と忠清道方言で言うような男だ。それこそ少女漫画ではなくギャグに近い。

-パンツ姿で歌を歌い、学校の偉い人にペコペコしている姿に驚くファンもいるのでは?

 「あ、あのシーンは本当に恥ずかしかったです! あのときの下着はあんまりです。透けて見えそうだったので2枚はきました。台本を研究しながら、頭の中を整理して細かい手の動きも考えました。もっと『壊れた』感じを出そうといろいろやったんですが、やり過ぎたかなと思った演技は全部カットされていました」

-女性に対する演技が自然だった。

 「本当の僕は小心者。学校でもいるかいないか分からないくらい物静かな子どもで、知っている女の子もいませんでした。今でも趣味や特技がないし、友達もあまりいません。彼氏としても全然。どっしりと構えることはできなくて、そばにいる人に頼りながら自分の弱い部分を隠そうとしています。先日テレビに出たときも汗をびっしょりかくほど緊張して、隣にいたパク・ボヨンさんにくっついていました。まだ子どもなんです」

 ほとんどの20代の男優たちはインタビューのとき、周りを見回してそわそわする。イ・ジョンソクは前にいる人の目をじっと見て言った。自分のことを小心者だとか子どもだとか言っているが、答えにもためらいがなかった。イ・ジョンソクは「髪の色はただ何となく変えただけ」と語った。

-次の役のために髪を染めたのでは?

 「いいえ。オフを過ごすつもりで染めました。所属事務所に対する反抗というか(笑)。昨年は『君の声が聞こえる』と『ノー・ブレッシング』を同時に撮影したので仕事が大変でした」

-この3年間、国民的な注目を浴びたドラマや映画に次々と出演した。これほど多くの作品に出演したのはなぜ?(イ・ジョンソクは昨年、映画『観相』『R2B』にも出演している)

 「19歳から21歳までの3年間、事務所に所属していながら何もしなかった時代がありました。あ、何もできなかったんです。デビュー(ドラマ『検事プリンセス』)でみんなに名が知れて、キャスティングもうまくいくと思ったのですが、何も変わりませんでした。両親がいろいろと助けてくれたのでアルバイトをする必要はなかったのですが、精神的に疲れたこともあってバーでアルバイトをしました」

-だから、いろいろやりたい?

 「『モデルになれば俳優にもなれる』『アイドル歌手になれば俳優もできる』という言葉に惑わされて、やりたくないことに引っ張り回された時期もありました。演技ができなかったときの渇望が出たのでしょう。のどがすごく渇いているから口にがぶがぶ水を入れたのだと思います」

-そのおかげでファンがたくさん増えた。男性ファンはいないようだが…。

 「僕のイメージの限界だと思います。ボーッとしている感じというか、地味というか。色白できゃしゃな感じもするし。自分で見ても幼いアイドルっぽい顔です。レオナルド・ディカプリオが若いころに悩んでいたのが分かります。僕もそんなときが来るでしょう」

-男らしさに対する悩み? 演技に対する悩み?

 「今はまだ『俳優イ・ジョンソクです』と自己紹介するのが恥ずかしいんです。自分が満足できる演技ができないから。20代の俳優が演技で認められるのは難しそうなので、早く年を取りたいですね。ガッチリ体形の俳優たちが男らしく見えるのがうらやましいです。でも、僕は運動が嫌い。体重を増やしてガッチリ体形になりたいと思ってたくさん食べると、おなかだけ出てしまうんです」

-しかし、人気があるのは「体格がいい男優」ではなく「イ・ジョンソク」だ。

 「人気というのは過ぎ去るものでしょう。子どものころからテレビを見るのが好きだったので俳優を始めました。あんなに好きだったテレビに出ていることがうれしいし、演技以外の仕事はしたくありません。人気が終わっても『俳優』と呼ばれる日を待っています」

◆イ・ジョンソク、グラビアギャラリー

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