映画『家に帰る道』(12月11日公開)は、「カンヌの女王」チョン・ドヨンが久しぶりに出演した作品。実話を基にした同作で演じたソン・ジョンヨンのように、チョン・ドヨンは2年ぶりに自分の“ホーム”のようなスクリーンに帰ってきた。

 「さすがチョン・ドヨン」。映画を観た観客の大多数はこのような反応だ。そして、「なぜ、こんなにブランクが長かったのか?」と思う。映画公開を前に、ソウル市鍾路区通義洞のカフェで会ったチョン・ドヨンは「作品がなかった」と話した。

 「意図的に出演しなかったのではなく、縁がなかったんです。読んだシナリオも多くなかったし。私が休んでいた時期は『悪いやつら』『新しき世界』など男性映画が多かったんですよ」

 『接続~ザ・コンタクト~』(1997)を皮切りに、16年間で14作の映画に出演。長い全盛期を謳歌(おうか)した。カンヌ国際映画祭では主演女優賞も受賞した。彼女の名前の前には、自然に「女王」という修飾語が付いた。より多くの自由と選択、機会が与えられると思われた。しかし、実際は違った。負担ばかり増えて、むしろ自由に動ける幅が狭くなった。彼女は長く悩んでいたことを一つ、二つと打ち明けた。

■ソン・ガンホとの対決「プレッシャーもあるが、共演したことが懐かしい」

 12月18日からは、ソン・ガンホ主演の『弁護人』が公開。『家に帰る道』と同じく実話を基にした作品で、ジャンルもドラマだ。青年弁護士時代の故・盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領をソン・ガンホが演じた。女王にとっても、手ごわい相手だ。『シークレット・サンシャイン』(2007)で息ぴったりの演技を見せた二人がライバルとなった。観客には興味津々な見どころとなるが、当事者にとっては“運命のいたずら”としか言いようがない。

 「すごくプレッシャーを感じています。もどかしくもあるし。その間、あの方(ソン・ガンホ)はたくさん映画に出演していましたが、私は本当に久しぶりなので。個人的にはソン・ガンホさんのファンです。『ナンバー・スリー』を観て、ファンになりました。そして、『シークレット・サンシャイン』で共演しましたが、いろいろ気遣ってくれたことが思い出されます。今もたまに、『シークレット・サンシャイン』のときのソン・ガンホさんが懐かしいです」

■働く母親…「2人目? 予定なし」

 映画『家に帰る道』は家に帰りたい妻と、妻を家に連れ戻したい夫、そして母親を恋しがる子どもの話だ。麻薬運搬犯と誤認されて大西洋のマルティニーク島の刑務所に収監され、756日ぶりに釈放された韓国人主婦の実話を基にした物語。

 撮影は容易ではなかった。フランス、ドミニカ共和国など海外での撮影が1カ月続いた。ドミニカの女子刑務所では、実際に収監者と撮影をしたりもした。劇中の娘ヘリン(カン・ジウ)のように、家に残してきた5歳の娘を思うと、なおさら気が重かった。チョン・ドヨンは「家に帰りたかった」とソン・ジョンヨンのセリフをなぞって、撮影当時の心境を語った。

 「働く母親として、悩みが多いです。子育てと女優業をしっかり両立したいんですが、現実的には簡単ではありませんね。子どもに申し訳ないです。だから、二人目は考えてもいません。今も“うまくやれているのか?”とよく思います。子どもは好きですが、自分の欲だけで、二人目を産むのは違うと思います」

■すでに40歳、年齢を踏まえた作品選びが必要に

 チョン・ドヨンは現在、映画『侠女:剣の記憶』(以下『侠女』)を撮影中。高麗時代末の当代最高の女剣客ソルラン役を演じ、『我が心のオルガン』(1999)以来14年ぶりにイ・ビョンホンと共演する。『家に帰る道』の撮影が終わると、すぐに武術練習など映画の撮影準備に入った。撮影が続き、大変そうだが、むしろチョン・ドヨンは「今、『侠女』があって、どれだけよかったことか」と笑った。

 「映画はもちろん、ドラマへの出演も考えています。編成が白紙となり、出演が流れた作品もあります。年齢も無視できないと思います。この間、仲のいいマネジャーが本当に素晴らしいシナリオがあると言っていたので、関心を見せたら、“『ハッピーエンド』のときのチョン・ドヨンのような”女優を探していると。今のチョン・ドヨンではなく。『侠女』があって、本当によかったです」

 チョン・ドヨンは最後に“信頼”について話した。演技力においては、安心して見ていられる女優になった。しかし、“作品”としては、ヒット作とそうでないものの差が激しい。

 「女優として残る目標は、作品で信頼を与える女優になるということ。今までが“チョン・ドヨンだけど、演技は確実だろうか?”という評価だったとしたら、これからは“チョン・ドヨンが出演する映画、ドラマだったら信じて見る価値がある”と言われたいです。そうなれるよう、努力していきます」

◆チョン・ドヨン、グラビアギャラリー

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