俳優イ・ジヌク(31)の演技に予想をはるかに上回る反響が巻き起こっている。

 tvNドラマ『ナイン:9回の時間旅行』(以下、『ナイン』)の主人公パク・ソヌとして時間も空間も超越した役を演じたところ「イ・ジヌクってこんなにイケメンだったっけ?」「イ・ジヌクってこんなに演技がうまかったっけ?」という声が相次いでいるのだ。

 「何だかばつが悪いし、気恥ずかしいですね」と語り始めたイ・ジヌク。「放送スタート当初はあまり反響がなかったのですが、見ている方々は皆さん楽しんでくださっているのだと思います。(いい評価は)後半に入って急に増えたようです。『さあ、これからだ』という感じですね。ようやく演技がちょっと分かってきたのかな。評価してくださっている皆さん、ありがとうございます」と話し、笑みを浮かべた。

 ドラマは20年前の過去に30分間だけ戻ることができる不思議な香りを使うことにより、パク・ソヌの周囲で起こる出来事を描く。脳腫瘍(しゅよう)のため限りある命と言われていたが、過去にさかのぼって自分の命を救ったり、時計の針を逆に回すたびに人が死んだりよみがえったりと予測不能な展開だが、イ・ジヌクの演技力で視聴者は思わず引き込まれてしまう。それだけ演じる側もハードルの高い役であり、作品だと言えるだろう。

 「初めは台本の魅力のとりこになって負担は感じませんでした。ですが撮影が始まると『これはそう簡単にはいかないぞ』って…。それでも伝えたいと思う内容が興味深いものだったし、タイムスリップで解決していくという要素が奇抜だと思いました。物理的にも撮影が大変で、感情の面でも容易ではありませんでしたが、興味のあるテーマだし、出来事のつじつまがきちんと合うように書かれた台本でした。台本をもらってすぐ、この脚本の先生は天才だと思いましたね。話が進み、信頼感もあったので迷うことなく出演を決めました」

 イ・ジヌクは「繰り返される人生の中でも変わらず自分のそばにいてくれる人々に感謝するようになりますね。数ある人生でいつも自分の本当の友達になってくれるヨンフンに『ありがとう』というセリフがあります。そのメッセージこそ、このドラマのテーマ。過去が結末なのか、現在が結末なのか。それぞれが考えていることが全て結論だとも言えるでしょう。どういう見方をするかによって違ってくるのです」と言って笑った。

 車の窓越しのキス、泣きながらのキス、公園でのキスなど、話題のキスシーンを生んだチョ・ユニとの共演も注目されている。同じタイムスリップ物のドラマ『仁顕王后の男』で男女主人公を演じたチ・ヒョヌとユ・インナが実生活でもカップルになったことから、今回もこの二人が恋人関係に発展するのではとささやかれた。

 「チョ・ユニさんとは本当に息がピッタリ合いました。それにもともと熱心な女優さんなので、出演者たちはもちろん、スタッフとも呼吸が合っています。実際、女優さんは皆さん魅力的。制作発表会前にそういう話題が出たから特に関心を寄せてくださったようです。でも皆さんのご期待通り(実際のカップル)にはなりませんが」

 それでは、実際に恋人ができたら公表する考えがあるのか質問すると、イ・ジヌクは「交際宣言をするメリットというのは実際にはありません。前も僕が公表したというよりは皆さん既に知っていたという状況でしたし、自分から公表する考えはありません。交際宣言というのは果てがない気がします」と話し、静かに首を横に振った。

 『ナイン』に出演して作品に真心を込めることを学んだイ・ジヌク。「本当に幸せな作品で、撮影現場が楽しかったし、全てがありがたいですね」と繰り返し語った。そこで「シーズン2制作が決まったら共演する気はありますか」と聞くと「真剣に検討すると思います」とまじめな顔で答えた。

 『ロマンスが必要2』『ナイン』など、このところ幅の広い役柄で演技が好評だが、今後はどんな作品に出るのだろうか。

 「まだ次にどんな作品に出たいとか、どんな役をやりたいとかいう考えはありません。今ようやく演技が分かってきた段階ですから。やってみたいと思うストーリーがあれば、どんなものでもやるでしょう。早く次の作品がやりたいという気持ちが強いですね」

 インタビューの最後に、もし本当にタイムスリップできる香りがあったら、実際に過去に戻って未来を変えてみたいか聞いてみた。

 「個人的にはないですね。実はこのドラマは『そんなことしても仕方がない』というストーリー。それができたからと言って今が満足できるような状況になる保証はない、というメッセージが込められているんですから。それに、変えたい過去はありませんね。そのときどきで残念だなと思ったことはあるけど、実際に変えたいと思うことはないです。ドラマが始まる前も、終わった後も。過ぎ去った僕の人生の中でやり直したいことはまだないです(笑)」

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