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インタビュー:シンヨン・ワコール 専務野々村ちかい
女性であれば誰もが憧れる下着ブランド、ワコールの韓国法人「シンヨン・ワコール」に勤務する野々村ちかい専務。4年目を迎える韓国での生活を満喫する彼と、散策を楽しみながらインタビューを試みた。
うららかな春の日の午後、新沙洞の街路樹通りにあるタルト専門店「デュークレム」で会った野々村専務は、終始笑みを絶やさなかった。ちょうど昼休みの直後だったため、やわらかなバナナ・タルトと香ばしいカプチーノは、十分満足してもらえたのではないか。ヨーロピアン・スタイルの高級感漂うこの店を初めて知ったのは、スイーツ・マニアの奥さんのおかげだった、と野々村専務は話した。彼は多くの中高年の男性たちとは違い、喫茶店へ好んで足を運び、ときどき韓国へ来る奥さんとも、ここでスイーツを楽しむという。
-ワコールは韓国でも有名なブランドですが、野々村さんから見て、韓国でワコールが持つブランド力はどの程度だと思いますか。
韓国とワコールの関係はちょうど40年前の1970年に韓国のVENUSブランドで有名な大手下着メーカー(株)新栄との合弁で (株)韓国ワコール を設立し、スタートしました。しかし、思うように売上が伸びず業績が低迷していた為、1992年に一旦合弁会社を清算し、新たに(株)新栄に出資し、社名を(株)新栄ワコールとして再出発しました。現在は売上1,800億ウォン、従業員も1,000名を超える規模となり、下着メーカーとしては韓国No.1にまで発展しました。
-韓国へ来られてから最初の数カ月間は、韓国での生活や会社での生活が大変だと思いませんでしたか。
2006年4月に着任し、早くも4年が経ちます。弊社では海外駐在の場合、着任するまで3~6ヶ月間、現地語の事前教育を受けるのですが、私の場合は突然、1ヶ月前の辞令で何の予備知識もないままでした。ハングルはただの記号にしか見えないし、言葉もわからない状況で着任し不安いっぱいでした。しかし実際に生活してみると韓国人は皆さん親切で、礼儀正しく、そして何より日本語が上手な人たちが多いことに驚かされました。あまり苦労せずに馴染んでしまった感じです。
-韓国は2012年まで、「韓国訪問の年」キャンペーンを展開し、多くの観光客を誘致するための取り組みを進めています。外国人の視点で見て、どのような点を改善すべきだと思いますか。
ここ1~2年は国際化やインフラ整備が急速に進んでいると思います。でも車に乗って感じることはあまりマナーが良いとは言えないことです。救急車などの緊急車両が近づいてきても誰も道を譲ろうとしないこと、信号無視は当たり前みたいなところや舗道をバイクがお構いなしに走ったりするところは改善すべきでしょう。また、日常のマナーでも、ところ構わずつばを吐いたりトイレで手を洗わない人が一部いることは残念です。
-韓国を訪れる日本人におすすめの観光地はどこですか。
済州島です。毎年10月にはゴルフで済州島にいきますが、ハルラ山や四方を海に囲まれた雄大な眺めは勿論、新鮮な海の幸も堪能できます。夜はホテル近くを廻る観光馬車の蹄の音がエキゾチックな雰囲気を醸し出し、『オールインワン』で有名なカジノもあってナイトライフも最高です。
-レストランよりも喫茶店を好まれると聞きました。今の韓国の「喫茶店文化」についてどう思われますか。
子供の頃から生クリームが大好きで、日本にいたときも和風よりバターや牛乳を使った料理やお菓子が好きでした。家内は定期的に韓国に来るのですが、家内はスィーツが大好きで、韓国で話題のカフェやデザートの店を旅行雑誌などで探してくるので、よく一緒に出かけます。最近、韓国のcafé cultureは日本や欧米にも決して引けを取らないレベルだと感じています。値段も引けを取らないですが…(笑)ヨーロッパなどで修行したパティシエがいらっしゃる店もあるのではないでしょうか?
-お気に入りの喫茶店はどちらですか。またその理由は何ですか。
最近話題の『カロスキル(街路樹通)』はお気に入りの一つです。おしゃれなオープンカフェやワインバー、ビストロ、ブティックなどが軒を連ねるこのエリアはまさに今の韓国を感じさせてくれます。その中でもイチオシが『Deux Cream』。表参道をこじんまりしたような雰囲気とフランス仕込みのスィーツ、ビジュアルにもこだわったカプチーノを味わいながら、『Modern Korea』を感じてみては如何でしょう?
-韓国の食べ物は好きですか。よく行かれる飲食店があれば、教えて下さい。
韓国料理はホンウォ(えいの発酵させたもの)やスンデなど一部を除いて大好きです。また野菜が多く摂れるので健康的です。韓国に来てからは日本にいるときの3倍くらい野菜を食べるようになりました。最近よく行く店は狎鴎亭にある『ポドシッタン』。テジカルビが最高に美味しくてお気に入りです。お薦めはチャムスッテジカルビとチャムスッメウンテジカルビです。社長(男性)は日本語がお上手で韓国語が出来ない方でも安心です。
■ヨーロピアン・スタイルのタルト専門店デュークレム(Deux Cremes)
タルト専門店「デュークレム」が、新沙洞の街路樹通りにオープンしたのは2008年。多くの女性たちが待ち望んだ店だった。スイーツが好きな若い女性たちが特に多いことに加え、高級感が漂うタルト専門店が、この地域にまったくなかったためだ。また、スイーツの中でも一つのメニューに特化して勝負を挑むというのは、容易なことではないだけに、一つ一つのタルトに「デュークレム」のプライドがにじみ出ているように感じられる。見た目が美しく、おいしそうなタルトを堪能しようと、特に週末には多くの客が訪れ、待ち時間は10分以上になるという。今やこの店は、街路樹通りのランドマークといえる存在になった。
特に人気のメニューは、バナナ・タルト、イチゴジャム・タルト、ティラミス・タルト、青いぶどうの実が一つ一つ埋め込まれたグレープ・タルトだ。野々村専務がおすすめのメニューはもちろん、バナナ・タルトだ。一切れが7000ウォン以上もする高級品だが、一たび口にしてすっかり気に入り、常連になる人たちも多いという。
■開館案内
*住所: ソウル市江南区新沙洞533-11
*営業時間: 11:00時-24:00時
*定休日: 年中無休
*Tel: 82-2-545-7931
文=オ・スンヘ 写真=チョン・イクファン 通訳=坪井あつこ