富川国際ファンタスティック映画祭「追憶の官能映画展」を契機に『愛麻夫人』を振り返る
1982年公開の1作目だけで31万人動員
劇場での性的解放感、インターネット時代に合わせ退潮

 7月16日から開催された富川国際ファンタスティック映画祭(7月26日閉幕)に、1980年代の官能映画を一般人が鑑賞できる追憶の回顧展が組まれた。

 夜間通行禁止令が解除されてから1カ月後の1982年2月6日、初めて深夜映画がソウル劇場で上映された。初日から人波が押し寄せ、劇場のガラス窓が割れるなどし、4カ月間の上映で31万人もの観客が集まった。上映されたのはチョン・インヨプ監督、アン・ソヨン主演の『愛麻夫人』。その後16年間で、『愛麻夫人』は数多くの続編や亜流作を生み出した。

 韓国映画データベースやポータルサイト「ネイバー」で映画情報を検索した結果、タイトルに「愛麻」が付いている韓国映画は、ビデオ作品を含め23作品にもなった。ビデオ収集家のキム・テウクさんは、「『ヨンパリ』『金斗漢(キム・ドゥハン)』『テコンV』『野いちご』『ヨング』などのシリーズ作があるが、『愛麻夫人』には及ばない」と語った。

 「伝説」の1作目は、今見ると当惑ものだ。上映時間は102分にもなるが、情事の場面は7分にもならず、そのほかはほとんどがエクスタシーにおぼれる夫人の顔のクローズアップばかりだった。ヒロインの上半身のアップもわずか3秒間。観客を引きつけた真の要素は、別のところにあった。

 軽く開かれた唇のすき間からのぞく白い歯、とろんとした瞳、幻想的な胸のライン…。夫人が浮かべる恍惚(こうこつ)の表情と、寝間着姿で雨の中をさ迷う様子に、観客の男性たちは衝撃を受けた。監督はコ・ドゥシムをキャスティングしようとしたものの断られ、韓中合作映画『武林大侠(きょう)』に出演した23歳のアン・ソヨンを指名したという。

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