先入観はすぐに砕け散った。質問と答え、そのやり取りを重ねるうちに、偏見と先入観は、率直さという破片となって飛んできた。

　「イケメン俳優」として注目されスターになっていく過程で、「突然神秘主義に包まれてしまった俳優」になったという先入観をもたれた。しかしカン・ドンウォンは、それを強く否定しようとはしない。ただ、自分に対する誤解が明らかに多く、「気難しい」と見られているため、やはり穏やかではないと語る。

　カン・ドンウォンは「自分のイメージがあまりにも消費されてしまうのはいやだ」と語る。それはまた、「作品で表現する」という俳優にはありきたりの「傲慢さと偏見」とはまた異なるものだった。

　カン・ドンウォンは、彼の年齢に見合う率直さと自信、そして魅力を十分に持っているように見えた。そのようなその点で、彼がイ・ミョンセ監督の『M』を選んだのは、「本当に良い選択だった」と思う。

　ミステリー形式で初恋に関する忘却と記憶、思い出を綴った『M』。カン・ドンウォンは強迫神経症に苦しめられるベストセラー作家を演じる。自分を追いかける視線を感じる神経症に苦しめられる主人公。ストーリーは夢と現実のあいまいな境界を行き来しながら展開していく。

　カン・ドンウォンは『M』のように「多少抽象的な部分もあるが、シナリオの開けた感じが好き。だから、イ・ミョンセ監督のシナリオはとても好きだ」と語った。「自分がそういうものが好きだということが、後になってわかった」とも付け加えた。

―現実の中でも、強迫概念を感じるか。

　「完璧でなければならないと思う。何をするにも、徹底して取り組むやり方だ。仕事には集中し、その代わり別のことでは緊張を緩める。家はわざと散らかしている。そうすることでリラックスできるから」