整形外科医で58歳の金さんは毎朝6時、ソウル市内の漢江沿いを早歩きしている。少し息は切れるが、疲れ果てるほどではない。短い会話も可能なスピードだ。少し汗は出るが、決して手に余るというほどではない。
金さんが糖尿病と診断されたのは1年前。空腹時の血糖値が138mg/dL、ヘモグロビンA1cが6.8%だった。正常値は空腹時の血糖値125以下、ヘモグロビンA1cが6.5%未満だ。金さんは糖尿病の薬の服用を拒み、まずは運動を始めた。スポーツクラブで何度かランニングマシンに挑戦したが、すぐに断念した。息が切れ、ひざが痛み、翌日ひどく疲れていたからだ。
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金さんの体が変わり始めたのは、意外にも単純なアドバイスがきっかけだった。「息が切れるか切れないか、会話ができるスピードで40分だけ歩いてみてください」。いわゆる「ゾーン2トレーニング」だ。
この運動法は、運動強度を5段階に分けた際、下から2番目に位置する運動を指す。最大心拍数(220-年齢)の約60-70%レベルで、息は切れるものの短い会話は可能なレベルだ。この強度では、体は炭水化物ではなく脂肪を主なエネルギー源として使い、乳酸は蓄積されず、筋肉内のエネルギー工場であるミトコンドリアが活発に動く。
かつて、こうした運動は単なる「怠慢な有酸素運動」と見なされていた。しかし最近では、その解釈が異なる。運動の目的が体力をつけることではなく、エネルギー代謝を効率的にし、慢性疾患を減らすことに置かれているからだ。糖尿病、脂質異常症、高血圧など中高年層が抱える慢性疾患は、体が脂肪を燃焼できず、血糖を効率的に処理できないために発生する。
そのため、脂肪燃焼能力を回復させ、インスリン感受性を改善し、血管の弾力性を高めるゾーン2トレーニングが注目されている。慢性疾患の根源である「代謝システム」を回復させるからだ。
ゾーン2トレーニングを継続すると、体は徐々に変化する。最初はゾーン2のスピードで歩いても息が切れる。だが時間がたつと、そのスピードが楽に感じられ、より長く動けるようになる。この変化は筋肉量の増加ではなく、細胞内のミトコンドリア機能の改善によるものと解釈される。体内のエネルギー工場の役割を果たすミトコンドリアの機能が向上すれば、脂肪をよりいっそう燃焼し、血糖をよりいっそう安定的に処理できるようになる。エネルギー効率も上がり、「燃えやすく、軽やかに動ける体」に変わるというわけだ。
金さんも、当初は一日30分歩くことすら苦痛だった。スピードを少し上げただけで息が切れ、足を止めなければならなかった。しかし、「会話ができるスピード」を維持するという原則を守った。2カ月後、同じスピードで50分歩けるようになった。すると、空腹時の血糖値が下がり始めた。6カ月後、ヘモグロビンA1cは6.3%まで低下し、正常レベルになった。ゾーン2トレーニングによって筋肉が血糖を吸収するよう促し、インスリン反応を改善させ、脂肪の蓄積を減らした結果だ。
ゾーン2トレーニングを正しく行うには、強度を息が切れるか切れないかくらいに保ち、1回につき30-60分以上、頻度は週3-5回が推奨される。運動の種類としては早歩き、自転車、軽いジョギング、水泳などが挙げられる。
ゾーン2トレーニングの中核は「強くではなく、長く」だ。多くの人がゾーン2に失敗する理由は単純だ。強くやり過ぎてしまう。息が切れてこそ運動だと信じているからだ。しかし、息が上がり始めると、すでにゾーン3以上になる。もう一つの誤りは、運動を短時間で終えてしまうことだ。10-20分では代謝の変化は起きにくい。
慢性疾患を抱える中高年層にとって、運動は体力をつけるためのものではなく、エネルギー代謝を円滑に回復させるためのものでなければならない。中高年層にとっての運動は「どれほどハードにやるか」の問題ではなく、「どれほど長く継続して代謝疾患を減らせるか」の問題というわけだ。
金哲中(キム・チョルジュン)医学専門記者
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