スウェーデンで1年間研修を受けていたときのことです。ある程度の寒風なら平気な鋼鉄の体力を誇るわたしでも、北欧の寒さは厳しく、風邪を引いた上にクプラ結石症まで患い、一時身動きできず部屋で寝てばかりいました。天井がくるくる回り何もできず、ただ苦しみながらうとうとしていたところ、外でベルが鳴りました。ドアを開けると、韓国にいるべき母親が立っていたのです。両手に荷物を持って。どうやってここまで来たのか尋ねると、「キムチがおいしくできたから孫たちに食べさせようと思って来たのよ。ステーキもいいけど、韓国のご飯とキムチが最高の薬でしょ」と言って、にっこり笑いました。
もちろん夢だったけれど、夢の中で見たキムチがとてもおいしそうに見えたので、起きて真っ先にしたのはキムチを漬けることでした。塩漬けの白菜に調味料と言えばイワシのエキスに千切りの大根、タマネギがすべてだったけれど、40歳という年齢で遠く離れた異国の地で初めて漬けたキムチは、まさに蜜の味でした。パンとシリアルで適当に済ませていた食事にキムチが加わってから、わたしも子どもたちも皆、風邪を引かなくなったので、「ご飯とキムチが薬」という韓国の母親たちの言葉は真理のようです。
今年、米ゴールデングローブ賞外国語映画部門で受賞した映画『ミナリ』でも、米国で暮らす娘や孫のために煮干しや粉唐辛子、韓薬(韓国漢方)などをたっぷり持って飛んでいく祖母が登場し、人気を集めています。「ちくしょう」「くそー」といった言葉が口ぐせの祖母が「小さいうちからお金を稼ぐ競争力を育てなければならい」として孫に花札を教える姿に、海外の評論家たちは大笑いしながら賛辞を送ったそうです。韓国では「学ぶことができず無知で、荒っぽく、過激な女性たち」としてずっと悲しく、無視されながら生きてきたおばあさんたちなのに、どうして海外では「halmoni」とまで表記され、熱狂しているのでしょうか。激浪の現代史を必死に生き、会得した韓国の女性たちの知恵と厚かましさ、その豊かな愛と忍耐に感動したのでしょうか。わたしたちは彼女たちの苦労にしっかりと敬意を表したことがあるでしょうか。
新型コロナウイルス感染症の流行により、世界中がいつにも増して家族の愛と共感を大切に感じるようになったのも、「Kおばあちゃん」の人気の要因と言えそうです。実際に、先日までソウル現代画廊で開催されていた『家、家族、自然、そして張旭鎮(チャン・ウクチン)』展は、早々に観覧予約が締め切られました。張旭鎮の死から30年たったのを記念して企画された展示だけれど、貧しくても自然の中で素朴な幸せを感じながら暮らす家族の様子が、新型コロナウイルス感染症により落ち込んだ心を癒してくれたのです。この余韻にしばらくひたっていたくて、緑色の丸い木が描かれた張旭鎮の版画を1点購入するという、小さな贅沢をしました。家の中が春でいっぱいになりました。
キム・ユンドク記者