雨が降ると思い浮かぶすいとん

 「均衡のマエストロ」「何でもバランスよく立てる男」…。米国CNN、英国BBC、日本のフジテレビなど、世界のメディアがピョン・ナムシクさん(58)を紹介するときに使う表現だ。石、ノート、ボウリングボール、伽倻琴、オートバイなど、大小問わずバランスを取って角や端に立てる「バランシング・アーティスト」であるピョンさんは「料理もバランスの芸術」と語る。「それぞれ異なる味や材料がバランスをなしたとき、一つの料理ができ上がるではないか」

 素朴で古びた店をよく訪れるというピョンさんは「長年続く名店は味だけでなく、人生の重心も取っている方々が主人のケースがほとんどだ」と語った。「一生懸命働いている。でも、ただ料理を売ってお金を稼ぐことだけを目的にしているわけではなく、分かち合い、施し、周りの人を助ける温かい心を持った方たちだ。周囲の人たちが感謝している食堂は長続きしている」

雨が降ると思い浮かぶすいとん

◆ヨンスンカジェコルすいとん

 「雨が降るとここのすいとんが思い浮かぶ。京畿道城南市盆唐区の事務所から車で1時間以上かかるけれど、わざわざ行くほどだ」

 ソウル市蘆原区上渓洞の水落山渓谷近くにあるすいとん店だ。列に並んで席に座ると、人数分の餅を出してくれる。注文を受けてからつくり始めるすいとんができ上がるまで、空腹を紛らしてほしいという配慮から店が提供しているものだ。

 すいとんは「まろやかな味」「中間の辛い味」「辛い味」の三つがあり、そのうち最もよく注文が入るのは「中間の辛い味」だが、それでもかなり辛い。辛い味に先制攻撃された舌を甘みのあるこくが癒してくれる。どうやってこねたのか、すいとんの弾力がすごい。薄い部分はプルプルしていてやわらかく、厚い部分はアルデンテのパスタのように歯ごたえがある。大きな土鍋に盛られて提供されたすいとんをあっという間にたいらげると、お腹は温まったがすっきりしている。

 すいとん・カルグクス(麺料理の一種)各7000ウォン(約630円)、エゴマすいとん8000ウォン(約720円)、キムチのジョン(切った魚、肉、野菜などに味付けした後、小麦粉をつけて油で焼いた料理)・ジャガイモのジョン各8000ウォン、ネギのジョン9000ウォン(約810円)。

キム・ソンユン記者
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