済州道の春は「ワラビの春」と言ってもよいだろう。それほど済州産のワラビは味がいいことで有名だ。太くてやわらかく、シコシコした食感が、ほかの地域で生産されるワラビとは「種が違うのではないか」と思えるほど差がある。昔からソウルにいる王に献上されたとし、「闕菜」と呼ばれたほど、済州産のワラビは味と香りが優れている。
済州産ワラビだからと言ってすべて名品というわけではない。済州ではワラビを「黒ワラビ」と「白ワラビ」に分ける。黒ワラビは墨のように色が濃く、野原に生えている薄緑色のワラビは白ワラビと呼ばれている。
ワラビが珍しくなく、おいしい済州では当然、ワラビを使ったメニューが発達してきた。済州郷土飲食保全研究院のヤン・ヨンジン院長は「済州ほどワラビをさまざまな方法で調理している地域はない」と断言する。「ナムルは基本で、ジョン(切った魚、肉、野菜などに味付けした後、小麦粉をつけて油で焼いた料理)やユッケジャン(牛肉や野菜を煮込んだ辛いスープ)、テンジャンクク(韓国風みそ汁)に使われているほか、豚肉やクボガイと一緒に炒めて食べている。最近ではチャプチェ(春雨炒め)に入れたり、キムチジョン、パ(ネギ)ジョンなどにも使われている」
「ワラビとニンニクの芽の炒め物」「ワラビチャプチェ」「ワラビジョン」「ワラビユッケジャン」もおいしいが、個人的には「ワラビ肉炒め」が最もお気に入りだ。作り方も簡単で、ワラビと豚肉を一緒に炒めればよい。
乾燥ワラビでナムルをつくるとき、たいてい湯がいて使うけれど、済州のワラビを使ってワラビ肉炒めをつくるときは、湯がかずそのまま調理する。済州のワラビはとてもやわらかいため、一歩間違うとワラビがつぶれてどろどろになってしまうことがある。