秋の海と向き合い、イカナゴを一皿…束草が私を呼んでいる

 10月25日午前、江原道束草市東明洞の束草港で「イカナゴ船が戻ってきた」という歓声が上がった。操業を終えて港に戻ってきた漁船には、シワイカナゴがぎっしりかかった網が積まれていた。「よいしょ! よいしょ!」 船着き場に一列に並んだ船員7人は、号令をかけながら網を引いた。地元出身で30年間イカナゴ漁に従事してきたラ・スングクさん(57)は「今年は天気の状況もいいので、イカナゴは豊漁が予想される」と語った。

 船着き場の一角に構えられた露店は、香ばしい匂いに満ちていた。観光客が、食べごろを迎えたシワイカナゴを味わおうと、卵をたっぷり抱えたシワイカナゴを火鉢に載せて粗塩を振り、こんがり焼いていた。家族と一緒に束草を訪れたキム・ギュドンさん(60)は「卵で満ちたシワイカナゴを炭火で焼いて一口食べると、香ばしさのある味で口の中がいっぱいになる」として、「今の時期なら、必ずシワイカナゴを食べてみるべき」と語った。

秋の海と向き合い、イカナゴを一皿…束草が私を呼んでいる

 イカナゴは10月から12月までが旬だ。冷水性の魚種で、海水温が15度を下回る冬に沿岸部へやって来て産卵する。東海岸でシワイカナゴ(ヤンミリ)と呼んでいる魚は、本来はイカナゴ(カナリ)だ。西海岸では、春に稚魚を取って塩辛にする。東海岸では、産卵期にある成魚を取り、焼いて食べたり鍋にして食べたりする。ラさんは「本来カナリはスズキ目の魚、ヤンミリはトゲウオ目の魚」だとして、「正式名称はカナリだが、東海岸ではヤンミリで通っている」と説明した。

 束草市は、東海岸でも指折りのイカナゴ産地だ。1990年代だけでも、冬になると30隻を超える船がイカナゴ漁に出た。漁民たちもイカナゴ漁でお金を稼ぎ、冬を越した。束草市は、イカナゴで年間10億ウォン(現在のレートで約9250万円。以下同じ)以上の経済的誘発効果を上げていると推算している。イカナゴの街らしく、2006年からは祭りも開いている。束草イカナゴ協会のイ・ジンギュ会長(59)は「東海岸で冬の海の主人公だったタラが姿を消し、イカナゴがその位置を占めた」として、「かつては『不細工』とぞんざいに扱われる魚だったが、今では漁民にとって貴重な冬のプレゼント」と語った。

 イカナゴは生臭さがあまりなく、淡白で、料理法も多様だ。ぷりぷりした活きがいいイカナゴは丸ごと炭火に載せて焼いて食べ、海風でからからに干したイカナゴは煮付けにして食べたり、鍋に入れて食べたりする。その中でも、丸ごと火に載せてあぶったイカナゴ焼きの、ほろ苦く淡白な味は逸品だ。

秋の海と向き合い、イカナゴを一皿…束草が私を呼んでいる

 今年はイカナゴが豊漁で価格も安い。イカナゴ漁が始まった10月17日以降、既に100トンが獲れた。昨年の同じ時期には43トンだった。このごろ束草港では、たかだか1万ウォン(約925円)でイカナゴが60匹買える。

 イカナゴは地域経済にも貢献している。昨年は江原道東海岸だけで1502トン、39億3208万ウォン(約3億6372万円)の漁獲を得た。17年と16年もそれぞれ595トン、1088トンの漁獲を記録し、19億183万ウォン(約1億7592万円)、29億5396万ウォン(約2億7325万円)の経済効果を生んだ。特に、束草と江陵で東海岸のイカナゴ漁獲量全体の90%以上を占めた。

 11月10日までは、束草港の埠頭(ふとう)一円で「束草うまいイカナゴ祭り」が開かれている。束草市イカナゴ協会が主催するこの祭りは、今年で12回目を迎えた。祭りの会場にはおよそ10棟の食べ物ブースが設置され、丸々と肥えた新鮮なイカナゴはもちろん、アバイスンデ(咸鏡道式のブタの腸詰〈スンデ〉)など束草の特産品も味わうことができる。イカナゴの鮮魚や海風でからりと干したものも安く買うことができる。見どころも続く。祭りの会場では、操業を終えて戻ってきた漁民たちが網を手入れする姿を直接見ることができる。イカナゴの模型のフォトゾーンも設置されている。

束草=チョン・ソンウォン記者
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