ハナはいろいろなことを知っている子に違いない。8月22日公開の映画『わが家』(ユン・ガウン監督)で小学校4年生の主人公ハナは、解けない問題にぶつかると、がむしゃらに台所で料理を作る。父親と母親がけんかをするのを見たときは茶碗蒸し、近所で見掛けたきょうだいユミとユジンが寂しそうに見えたときはスイカを切ってフルーツポンチを作る。そしてこう言う。「ご飯食べよう」と。子どもの言葉は意外にもとてもパワーがあり、声を荒げていた大人たちも気勢をそがれたような表情で食卓につき、ため息をついていたきょうだいもまずスプーンを手に取る。食べていると、こぼれ落ちそうだった涙はすっかり消え、怒りもおさまる。スプーンがかちかちぶつかり、水をごくりと飲み込み、あれほど深刻だったことがどれもどこかに飛んで行ってしまう。
しかし、ハナもやはり子どもだ。どうしても物事が解決しないときはハナもしょげてしまう。弁当を作っておいたからと言ってどうなるのか、おかずを作っておいたからと言ってどうなるのか。「ご飯食べよう」という自分の話を大人たちが無視するとき、あれほど解決したかった問題が絡み合うとき、ハナも唇をかみしめるしかない。大好きなきょうだいユミとユジンが家に遊びに来て「お姉ちゃんのおうち、すごくいいね」と言ったときも、困惑してしまう。「わが家は外から見るといいけれど、実は腐っている…」。そんな言葉を飲み込み、ハナが差し出すのが混ぜ麺だ。ゆでたラーメンを薬味だれで和え、半熟卵をいくつかのせた一皿。作るのは難しくないが、小学4年生の子どもとしては、自分なりにベストを尽くし、真心を込めて完成させた料理。ユミは混ぜ麺を食べながらハナの目を見つめる。「お姉ちゃん、私が全部聞いてあげるよ」とでも言っているかのような表情で。子どもたちが混ぜ麺を食べている居間には、ちょうど午後の日差しがそっと差し込んでいた。
ことのほか頭の中が混乱していて複雑だった日、ふとこのシーンが思い浮かんだ。ゆで麺を取り出し、冷水ですすいで市販の薬味だれと混ぜた後、大根葉のキムチと卵をのせ、食卓についてあっという間に一皿平らげた。甘くて辛くてさわやかな味。ついでに頭の中もすっきりした。