「今や『辛甘塩』の時代だ。一時、甘じょっぱい食べ物が『甘塩』と呼ばれ飛ぶように売れたが、最近は辛さが追加された『辛甘塩』を求める人が多い。蒸し暑い日が続き、不快指数が高くなるほど、よく売れる。ピリっとした唐辛子の味が全てを忘れさせてくれるからだ」
「ミシュランガイド」で料理がすばらしい名店に与えられる星を二つ獲得した「Mingles」のカン・ミング・シェフとモダン韓国料理レストラン「珠玉」を率いるシン・チャンホ・シェフは1年前、ある鶏料理店で丸鶏メニューを提供し、人々を驚かせた。ソウル市江南区ノンヒョン洞の「孝道チキン」のメニューを両シェフが開発したのだ。シシトウとジャコの炒め物のような、いわゆるご飯のおかずをチキンにのせた「シシトウ・ジャコ・チキン」。発売するやいなや口コミでうわさが広まり、店には行列ができるようになった。今夏には「コマウォ・チキン」が登場。「コマウォ」とは、「コチュ(唐辛子)とマヌル(ニンニク)が入っているからメウォ(辛い)」という韓国語を省略して付けた名前だ。辛い唐辛子をたっぷりのせた丸鶏。両シェフは「揚げた鶏の脂っぽさを唐辛子とニンニクが抑えてくれる」と説明した。
暑いほど辛い味が人気だ。飲食業界では最近、唐辛子は欠かせない仕上げの材料として定着している。丸鶏はもちろん、クリームチャーハン、パスタなどのようなメニューにも、青陽唐辛子や赤唐辛子、シシトウなどが使われている。これまで外国の料理にはだいたいイタリアやタイの乾燥唐辛子が使われていたが、最近は韓国の青陽唐辛子を入れる店が増えている。カクテルに唐辛子みそや粉唐辛子を活用する店もある。
◆夏にはやっぱり唐辛子
ソウル市江南区道谷洞のイタリア料理店「minu.c」のイ・ミヌ・シェフは、店をオープンする際、「ハラペーニョ・パスタ」をメニューに入れた。「仕事をしていると疲れて刺激的な味を求めるときがある。そんなとき、従業員たちと一緒に作って食べた」。砂肝と刻んだ青陽唐辛子の漬物をパスタにのせた。ピリ辛味で人気だ。二日酔い解消のために食べる客もいる。ソウル市江南区駅三洞の「トッコギ506」では、プルコギ(韓国風すき焼き)を食べて残った汁を使って青陽唐辛子クリームチャーハンを作ってくれる。甘じょっぱいプルコギの汁にご飯を入れ、チーズをたっぷり加えた後、青陽唐辛子を入れる。ホ・セビョン代表は「最初にこれを見て『わあ、なんでクリームチャーハンなの?』と言っていた方たちが、底に焦げ付いた部分まで食べているのをよく見かける」と話した。
ソウル市江南区清潭洞のバー「アリス清潭」では、辛いカクテルを提供している。キム・ヨンジュ代表は「しんどい一日を過ごしたお客さまが、よく唐辛子や粉唐辛子をベースに使って作った辛いカクテルを注文している」とした上で「そんなとき、サムパプ(葉野菜でご飯を包んで食べる料理)カクテルをつくって提供したことがある。プレミアム・ファヨにエゴマの葉とミントを入れ、唐辛子やライム、ごま油を1滴入れる。元気が出る味だと言われる」と語った。
◆止まらない中毒
辛い味ブームは毎年強烈さを増していく。麻辣やスリラチャのように、舌や鼻をまひさせるほど強い海外の香辛料を使ったメニューも日常化している。皮膚科のユン・ジヨン院長は「一種のエンドルフィン・ドーパミン中毒のようだ」と言う。「辛味が舌を刺激する痛覚を脳が自覚すると、天然の鎮痛剤と言えるエンドルフィンホルモンと興奮を呼び起こすドーパミンが分泌され、そのため辛い物を食べるとストレスが解消され、頭がすっきりするような気分を感じる」ということだ。しかし、食べ過ぎると胃や食道の炎症を引き起こし、悪化させる可能性がある。辛い物を食べたとき、もしも呼吸困難や肌のかゆみを感じた場合には、アレルギーがあるのかどうか調べた方がよい。
ソン・ヘジン記者