ソウル市内の景福宮近くにある踏横断歩道。青信号になったので渡ろうとすると、私(記者)以外は皆、韓服(韓国の伝統衣装)姿だった。大河ドラマの撮影現場でもないのに。むしろ、韓服を着ていない私の方がぎこちなかった。
春らしい陽気が続いている今日このごろ、王宮の周辺では韓服姿で街を歩く観光客をよく見掛ける。景福宮近くのレンタルショップでは、平日にも一日におよそ300人が韓服を借りていき、そのうち80%が外国人観光客だという。今やもう、観光する上で「コース」になっているようだ。
街に韓服姿の人たちがあふれているのは、韓服を着ていくと無料で入場できるシステムが始まった2013年から。近くに次々と韓服レンタルショップができた。レンタルショップで貸し出す華やかで着やすい韓服に対する懸念の声もあった。韓服があまりにも変形され、固有のアイデンティティーを失っているという指摘だ。一方、伝統衣装も時代に合わせて変化していくのが自然だという、反対の意見もある。
韓服姿の人たちをしばらく眺めていた。笑顔あふれる表情であちこちで写真を撮る姿は、幸せそうに見えた。韓服がこんな風に楽しむ文化になったことがあるだろうか。格式を持って着こなすべきと思われていたような韓服を街で見掛けるという事実だけでもすてきだと思う。