最近、フランチャイズではないベーカリーに注目が集まり、製菓業界に地殻変動が起きている。地域に根差した名物ベーカリー、本場の味を味わえる海外のベーカリーブランド、パン職人個人の名声をアピールした有名ベーカリーなど、ベーカリー業界のダークホースとして浮上している「非フランチャイズベーカリー」を見てみよう。
◆大邱近代通りあんぱん
「大邱近代通りあんぱん」は昔ながらのあんぱんの味を現代的に再現したモダンなあんぱん、若い世代をターゲットにした生クリーム入りあんぱんなどが人気の、大邱の名物ベーカリーだ。毎日手作りしている新鮮なあんこから感じられるかすかな甘み、あんぱんの中にぎっしり詰まったあんこやクルミの食感などが人気の秘密。大邱近代通りあんぱんは「大邱を代表するグルメ観光商品開発」を目標に、2015年3月に大邱市内の南城路に1号店をオープン。口コミで広まり、韓国観光公社が選ぶ「大邱3大ベーカリー」に名を連ねた。当初は嶺南圏(慶尚道)を中心に事業を進めてきたが、最近人気が高まっているのを受け、全国に店舗を拡大している。
◆OPSベーカリー
「OPSベーカリー」は釜山を代表する名物ベーカリーだ。1989年に南川洞で小さなパン店としてスタートしたOPSベーカリーはしばらく前、近所にできた大型フランチャイズと勝負を繰り広げ、ひるまず生き残ったという武勇伝まであり、地域を代表するベーカリーとして成長してきた。現在はソウル市中区小公洞のロッテ百貨店など、全国に12店舗ある。代表的なメニューは、ビッグサイズのシュークリームパン、「塾の前」という名前が付いたカステラパンだ。シュークリームパンは一般的なベーカリーで販売しているシュークリームパンを2、3個合わせたような大きなサイズが特徴で、香ばしく焼いたシュー生地の中に、高級バニラビーンズを使ったソフトなバニラカスタードクリームがたっぷり入っている。「塾の前」は、子どもたちが塾に行く前に食べるパンという意味で、卵や慶州産のはちみつを使い、深みのある甘さ、ソフトな食感を生かしている。
◆タルティーンベーカリー
「タルティーンベーカリー」は昨年1月、ソウル市竜山区漢南洞に1号店をオープンした、米国サンフランシスコ発のベーカリーブランドだ。昨年4月、12月には爆発的な人気に後押しされ、ソウル市麻浦区のライズホテル、同市江南区道谷洞のタワーパレス地下にあるSSGプレミアムフードマーケットにそれぞれ2号店、3号店をオープンした。オリジナルのサンフランシスコ式パンの味をそのまま感じられるのが特徴で、さわやかな酸味が感じられる天然酵母を使った「カントリーブレッド」が代表的メニュー。カントリーブレッドは欧州の農家の食卓でよくみられる食事用パンで、その名の通り見た目は素朴だが仲はソフトでしっとりしている。発酵パン特有のさわやかな味、歯ごたえは、韓国の酒パンとも似ている。
◆キム・ヨンモ菓子店
「キム・ヨンモ菓子店」は韓国のベーカリー市場で生きる伝説、重鎮としてたたえられる「名匠」キム・ヨンモ代表が営む製菓店だ。現在、ソウルをはじめ首都圏に8店舗あり、成功したパン店の代表とも言える。1982年にオープンして以来、引き続き味に対する革新を試みてきたのが人気の秘訣だ。最近はどこのパン店でもよく見られる「天然酵母パン」や「有機小麦」を韓国で真っ先に取り入れ、商品化したのが代表的な例。また、ジャマイカラムを基礎としたシロップを使って開発したモンブランは、韓国の消費者はもちろん、ベーカリー先進国であるフランスでも人気を集めている。