インタビュー:絶え間なく歩き、描き、撮ってきたハ・ジョンウ

重々しい話には軽い笑いを、軽妙な話には適度な重みを
18年12月26日に新作『PMC:ザ・バンカー』公開

▲ハ・ジョンウは、映画の撮影時間を除くと、ほとんどの時間をウォーキングや絵に費やしている。ハ・ジョンウは「歩くことと絵を描くことは、俳優ハ・ジョンウの養分」と語った。/写真提供=ネスプレッソ
▲ ▲ハ・ジョンウは、映画の撮影時間を除くと、ほとんどの時間をウォーキングや絵に費やしている。ハ・ジョンウは「歩くことと絵を描くことは、俳優ハ・ジョンウの養分」と語った。/写真提供=ネスプレッソ

 ハ・ジョンウ(40)はニックネームが多い俳優だ。まず「ハジョシ」。近所のアジョシ(おじさん)のように親しみがあって図々しいから、としてファンが付けたものだ。メソッド演技や彫刻のようなルックスで観客を圧倒するということはないが、スクリーンでハジョシの顔を眺めていると、観客は安心する。沸点を越えてぐつぐつ煮え立つ映画は落ち着き、逆に氷点へとひた走る冷たい映画は生気を取り戻す。

 観客1000万人を動員した『暗殺』と『神と共に』シリーズ、そして12月26日公開のアクション映画『PMC:ザ・バンカー』に至るまで。ハ・ジョンウは一定の温度を保つバイメタル、あるいは濃度を調節する水のような存在だ。重いストーリーには軽い笑いとアドリブを交えて観客に息抜きの余裕を与え、軽妙な非現実的作品には適度に現実の重みを載せる。ハ・ジョンウがソン・ガンホ、ファン・ジョンミン、オ・ダルスに続き4人目の「観客1億人動員俳優」に名を連ねたのは偶然ではない。ハ・ジョンウはどんな作品や状況でも「頼もしく」見せる方法を知っている。

■安心して見ていられるストーンフェイス

 「ハ・デガル」も、ハ・ジョンウのニックネームの一つ。頭が大きいからと、「頭でっかち」を意味する単語にちなんで付けられた。ハ・ジョンウは、その顔に大きな価値がある。時にはハ・ジョンウの顔だけで映画が1本作れるほどだ。観客558万人を動員した『テロ、ライブ』では、テロリストと心理戦を繰り広げるニュースのアンカー役を、712万人を動員した『トンネル 闇に鎖(とざ)された男』では、崩落したトンネルに閉じ込められた会社員の役を務めた。どちらも限定された空間を舞台に、ハ・ジョンウの表情一つで起承転結を完成させ、過不足ない表情で作品のリアリティーを活かした。

 『PMC:ザ・バンカー』もまた、ハ・ジョンウの顔に頼っている。ハ・ジョンウは、オペレーションルームで無線カメラを操作しながら外国人傭兵を指揮するチーム長を演じる。観客は、ハ・ジョンウの視点でモニターを通して戦闘を見守ることになる。独特な演出は時として散漫に感じかねないが、ハ・ジョンウの表情とせりふのおかげで作品は緊張感を保っている。どんな女優とも釣り合うところがまた、ハ・ジョンウならではの利点。『素晴らしい一日』のチョン・ドヨン、『ラブフィクション』のコン・ヒョジン、『暗殺』と『ベルリンファイル』のチョン・ジヒョンに至るまで、ハ・ジョンウはどんな女優ともぴったり呼吸を合わせる。弾け過ぎず落ち着き過ぎてもいない、でき過ぎではなく足りなくもない、今の時代の「普通の顔」を、ハ・ジョンウはそうやって代弁している。

インタビュー:絶え間なく歩き、描き、撮ってきたハ・ジョンウ

■休むことなく歩き、描く

 ハ・ジョンウは映画を2本(『ローラーコースター』『いつか家族に』)撮った監督でもあり、成功した画家でもあり、ベストセラー作家でもある。これまでに100点以上の絵を発表し、1800万ウォン(約180万円)台の値が付いた作品もある。2013年に米国ニューヨークで展示した絵は完売した。11年には、ハ・ジョンウの絵と演技哲学を収めたエッセイ集『感じるものがある』を手掛けて作家デビューを果たし、18年11月には一日3万歩以上歩きながら感じたことをつづったエッセイ『歩く人、ハ・ジョンウ』を出版した。12月23日現在、同書は教保文庫ベストセラーの第14位だ。

 ハ・ジョンウは、自分自身を常に「規則正しいアーティスト」と呼ぶ。「アーティストは感情の起伏が大きく、アルコールや薬物にのめり込みやすかったり、逸脱しがち」という偏見は誤りだと語る。実際、ハ・ジョンウは毎年3作品以上を撮ってきた、模範生のような俳優だ。毎日歩き、ひたむきに絵を描いて自分を鍛えてきたおかげだ。「集中して絵を描き切れば残尿感はなくなり、すっきりした気分になる」というわけだ。

 『歩く人、ハ・ジョンウ』では、毎日3万歩以上歩く理由についてこのように記した。「ぎらぎらした衝動の瞬間にのみよい作品を生み出すことができると信じるなら、ある瞬間、暮らしは完全にダメになってしまう。私が知る限り、よい作品はよい暮らしから生まれる。私の芸術はボヘミアンよりも、会社の命運が懸かったプロジェクトチームを立ち上げる会社員の方に似ている」

ピョ・テジュン記者
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