足を踏み出すたびに秋を感じる。古びた線路、豊かな秋の味覚あふれる伝統市場、さまざまな体験ができる農村体験村。さらに秋の日差しが届かない洞窟や黄金色に輝くススキ野原に至るまで…。
今秋、誰よりも秋を満喫したかったら江原道旌善に出掛けてみよう。1泊2日で秋を満喫できるはずだから。
■秋の趣きの終着駅「旌善レールバイク」
旌善に着いて真っ先に向かったのは、旌善で最も有名な観光地、旌善レールバイクだ。ここではレールバイクに乗って九切里駅からアウラジ駅まで、およそ7.2キロのコースを走ることができる。有名観光地ということで、レールバイクに乗るためには事前予約が欠かせない。
レールバイクを利用する際には注意事項がある。乗車定員超過は禁止で、運行中に無断で下車したり喫煙・スピードオーバー・飲酒なども禁じられているので留意しなければならない。
自然の風景を眺めるのもいいが、各区間ごとにテーマが設定されている。最初に出会うのは旌善アリランだ。線路横の壁に描かれた音符が旌善アリランを示している。そのままずっと走っていくと、記念撮影できる場所がある。専門家が撮ってくれるので、カメラがないと残念がる必要はない。
ペダルを踏んで下っていき、戻るときは風景列車に乗ってスタート地点に戻って来る。下ったルートをさかのぼる気分もなかなかだが、車窓からの風景は倍の美しさを誇る。レールバイクは毎日午前8時30分から午後4時30分まで運行している。
■秋を味わう「旌善アリラン市場」
ペダルを力いっぱい踏んだ後は、お腹が空いてくる。まっすぐ旌善の町中へ向かった。ここでは旌善アリラン市場という伝統の五日市が開かれている。ここでは、江原道名物のさまざまな特産品や地元グルメを堪能できる。
ここで是非味わうべきなのが、ジャガイモ団子(カムジャオンシミ)だ。ある料理番組で旌善最高の味に選ばれたカムジャオンシミは、生のジャガイモをすりおろして水にさらし、沈んだものをすくい取った後、練って作った郷土料理だ。市場のあちこちでカムジャオンシミを煮ている様子を見かける。どこでもいいからでんと座って、カムジャオンシミを頼んで食べてみよう。少し薄味ではあるが、好みに合わせて味を加えるとまさに絶品だ。
■秋を体験する「徳雨里体験村」
お腹を満たして向かった場所は、町中からおよそ7キロ離れた徳雨里体験村だ。ここには「旌善中の旌善」と呼ばれるほど見事な自然の風景がある。屏風のように開けた絶壁、100メートル以上ある石峰、その間を縫う水の流れなどは、旌善の自然景観そのものだ。またここは最近、tvNのバラエティー番組『三度の食事』やMBCの『パパ、どこ行くの?』、ウォンビンとイ・ナヨンの結婚式などで知られるようになった。
ロケ地の裏手では、村が誇る徳雨八景を目にすることができる。徳雨八景とは、村で最も優れた景観を誇る8カ所のこと。第1景は玉筍峰、第2景は吹笛峰、第3景はウムグムジャン、第4景は白烏潭、第5景はクウンビョン、第6景は伴仙亭、第7景は霽月台、第8景はナクモアムだ。番組を見た人なら、玉筍峰に一番なじみがあるだろう。
村の全景もなかなかだが、ここでは臼(うす)でコーヒー豆を挽くバリスタ体験、素手のマス取り体験など、さまざまな体験が外せない。村の駐車場の方にあるジョンドク分校でこれを体験できる。バリスタ体験は、かつて『三度の食事』に登場したコーヒーを実際に作ってみるというもの。
全ての体験を終えるころには、太陽が山影に隠れそうなほど傾いていた。町中には戻らず、村で一夜を過ごすことにした。ここを選んだ理由は、広くてきれいな宿を比較的安く利用できるからだ。それに、夜空を彩る星を眺めることができるという特権も享受できる。
■秋に休むのにぴったり、旌善「画岩洞窟」
翌朝、村で簡単に食事を済ませた後、画岩洞窟へ向かった。村からおよそ10キロ離れた場所にあるこの洞窟は、かつては金を掘る金鉱だった。観光ルートは全長1803メートルで、金鉱脈の発見から金鉱石採掘まで全ての過程を見ることができる。所要時間はおおむね1時間30分ほど。
丈の長い服を着てから洞窟に入ると、「外の世界」とは全く違う風景が広がっている。洞窟は「歴史の場」をスタート地点として「金脈に沿って365」「童話の国」「金の世界」「大自然の神秘」という順で見ていく。「歴史の場」は、昔の鉱山施設やその痕跡を目にすることができる空間だ。当時の様子を模型で再現し、誰でも簡単に理解できる。
「金脈に沿って365」は、365段の階段が続く洞窟だ。傾斜のある階段に沿って降りていくと、あちこちで石花(アンソダイト)が美しい光景を作り上げている。さらに、第2階段の入り口にある展望台では足元からほとんど垂直に落ち込む洞窟を見ることができ、ぞっとするようなスリルを味わえる。
「童話の国」は、色とりどりのライティングと調和した洞窟、妖精の姿を見ることができる場所だ。かつてここで金を掘って精製していた様子はもちろん、生産に至るまで、全ての過程を童話的に演出している。それだけでなく、あちこちに旌善の主な観光地についての展示もあるので、旌善の魅力も自然と伝わってくる。
「金の世界」を過ぎ、最後の「大自然の神秘」は天然洞窟で、東洋最大規模の「流石瀑布」(落差28メートル)を見ることができる。これは広場の右側に位置し、黄金を連想させる見た目だ。カーテンのような形をした鍾乳石と洞窟珊瑚(ケイブコーラル)などが調和し、壮観をなす。この流石瀑布を見ているだけでも、大自然の神秘が感じられる。
■ススキ花祭り
最後に訪れた場所は、この時期是非立ち寄るべき旌善の「ミンドゥン山」(はげ山)。いきなり山に行くなんて…と思うかもしれないが、ここに立ち寄るべき理由は一つ。秋がやって来るころ、ここは山ではなくススキの海と化すからだ。
海抜1117メートルのミンドゥン山は、その名のとおり頂上には木がなく、広々とした稜線一帯が全てススキ野原になっていることで有名だ。ここは山が険しくなくなだらかで、ススキが穂を出し、風でも吹けば銀色の波が海のうねりのように押し寄せる。そのためか、ここは韓国の5大ススキ群生地の一つとしても有名だ。
壮観を誇るススキを見たいなら、山に登らなければならない。登山コースは3本あり、第1コース(2.3キロ/所要1時間30分)は甑山小学校から頂上に向かうルートで、第2コース(1.2キロ/40分)はパルグドクから頂上を目指すというもの。最後の第3コース(3.8キロ/2時間)はサムネから頂上へ向かう。
コースは自分の体力次第で選べばいい。どのコースを選んでも登山の途中に広がる景色は美しいので、心配しなくてもいい。でこぼこした山道を辿って30分ほど登ったころだったか、さらに上の方で背の低いススキ野原が広がっている様子に目を奪われた。
今秋、誰よりも秋を満喫したかったら、江原道旌善に出掛けてみるのはどうだろうか。どうやって行こうとも、それは関係ない。気の向くまま歩く旌善のあちこちで秋と出会えるのだから。