インタビュー:イム・スジョン「母親役もできる今の自分がいい」

インタビュー:イム・スジョン「母親役もできる今の自分がいい」

 「映画で1000万人動員してみたいし、深みある役もやりたい」

 全ての俳優がそう思うことだろう。人気商売である以上、商業的な成功は重要だ。それに劣らず、俳優としてのプライドも重要だ。4月19日公開の低予算映画『あなたのお願い』のインタビューに臨んだイム・スジョンは、この「二兎」を追ってどちらも手に入れたいという率直な気持ちを隠さなかった。だが最近、イム・スジョンの姿を商業映画で見ることは難しい。『ザ・テーブル』に続いて『あなたのお願い』と、小さな映画にばかり出演している。「路線を変えたのではないか」と言う人もいる。

インタビュー:イム・スジョン「母親役もできる今の自分がいい」

 「独立系の映画には多様な素材、個性的なストーリー、実力ある人材が多いではないか。実際はそういうものが韓国映画の力なのに、ある瞬間から多様性をかなり失った。なので、商業映画と独立系映画のバランスが重要だろうと思う。少しでも韓国映画の多様性の力になれればという思いから、そして少しでも顔が知られている俳優がやった方が観客にもすんなりアプローチできるだろうという思いから、機会があるごとにチャレンジしている」。イム・スジョンは『箪笥』のほか『サイボーグでも大丈夫』『ハピネス』『チョン・ウチ 時空道士』などに出演し、キム・ジウン、パク・チャヌク、ホ・ジノ、チェ・ドンフンら最高の監督たちと共に仕事をした。韓国映画のルネサンス時代を過ごし、韓国映画と共に育ってきた女優だ。そんな経験が、独立系映画に対する愛情と活動につながった。

 現実的な理由もある。女優が商業映画でできる役は多くない。「MeToo運動で映画界もかなり変化があるだろうが、既存の商業映画は男性俳優中心の企画が多い。女優に与えられる役には限界があり、演技上の物足りなさがあるとでも言おうか。これまでやってみたことのない深みある役をやることで、カタルシスみたいなものを感じられるように思う」

 イム・スジョンは『あなたのお願い』で、デビュー以来初めて母親役を演じた。それも、だいぶ成長した中学3年の息子を持つ母親だ。『あなたのお願い』は、ヒョジン(イム・スジョン)が事故で夫をなくし、夫の息子ジョンウク(ユン・チャニョン)を引き取ることから展開する物語を描く。血縁で結ばれていない二人を通じて、家族の概念を問い掛ける。切々とした母性を要求する演技なら負担だったろうが、だしぬけに生じた母親・息子という関係に、スクリーンの中も外も関係ない。イム・スジョンは自分が感じた通りに表現した。

 「年齢を重ねるにつれ、母親役は自然に受け入れないといけないなと思っていた。初々しく神秘的なイメージのおかげでかなり人気をいただいたが、それ以上のものをお見せできないことへの悔しさや申し訳なさがある。なので、母親役もできる今の自分の姿の方がいい」

 映画は、劇的な仕掛けや過剰な感情なしにメッセージを伝える。イム・スジョンの演技も同様だ。力を抜いたのに、逆に物語を引っ張るがっちりした力が感じられる。イム・スジョンも自らの演技を「柔軟になって広がったみたい」と評した。以前のイム・スジョンなら、こうしたいい雰囲気を振りまける作品と一日も早く出会って力を注ぎたいと考えたはずだが、今では気長に時を待つという。

 「30代になって変わったように思う。20代のころは、ひたすら映画、演技のことしか考えていなかったが、30代になってから、演技のほかに別の楽しみを探しながら時間を過ごしている。そうする中で、きっちり積み重ねてきた作品も遠のいた。積極的に活動していないので、人々は『消えるのではないか』と思うかもしれないが、今ではそういう反応を気にしなくなった。焦りがないからか、一段と自由で気楽になった」

 「一つ選んだらほかの一つは捨てないといけない」というヒョジンのせりふは、イム・スジョンのことでもあった。多くの作品に出ていない代わりに、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やポッドキャスト(インターネット放送の一種)など、作品外の活動が増えた。自分だけの世界から抜け出し、世の中とコミュニケーションを取り始めたイム・スジョンの演技には、現実味が感じられた。イム・スジョンが「演技の幅が広がったみたい」と言う背景はここにあるのではないか。

 「皆さんにいいところを見せられなくても、仕方なくあきらめる部分が生じても、惜しんだりせず自分の思い通りのスピードで進んでいきたい。おかしな自信だが、俳優はこういう風にしていても、一ついい作品と出会えれば、何事もなかったかのように復活したりする。そういうときがまた来るのではないだろうか」

パク・ミエ記者
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