ラップで大人の胸を打つ10代の若者たち

『高等ラッパー2』のキム・ハオン、イ・ビョンジェ、ペ・ヨンソ
汚い言葉が乱舞する既存のヒップホップから抜け出し、自分の物語で音源チャートを席巻
「憎悪ではなく希望を歌う」

ラップで大人の胸を打つ10代の若者たち

 髪は黄色く、着ている服はだぶだぶどころか、ずり落ちている。学校には通っていない。「問題児」というレッテルを張られてもよさそうな10代の若者たちだ。Mnetの高校ラップ対抗戦番組『高等ラッパー2』に出演したキム・ハオン(18)、イ・ビョンジェ(18)、ペ・ヨンソ(18)。大人たちの烙印をあざ笑うかのように、3人がテレビで歌ったラップはブームを引き起こし、各種音源チャートを席巻した。「内面の平和を見いだそう」というキム・ハオンの突拍子もないラップは、競争に慣れた大人たちに新鮮な印象を与え、ソウル大学に通う姉に抱く劣等感、両親の離婚の話を歌にしたイ・ビョンジェとペ・ヨンソの率直な告白は重く響いた。「新曲の作業に加えてグラビア撮影もしたので、きのうは1時間しか寝られなかった」と言って目をこする3人と、4月18日にソウル市内のカフェで対面した。

■10代のラップが大人の心を癒す

 「僕は真理を探し求め、得たものを基に自分だけの芸術をやりたい旅人、満18歳のキム・ハオンです」。今シーズンの優勝者キム・ハオンが、あどけない顔で自己紹介をした。テレビで「瞑想が趣味」と打ち明け、突飛な魅力を振りまいたキム・ハオンは、不満でいっぱいの既存のラッパーとは異なる姿で人気を集めた。「内面の平和を見いだすため瞑想する。自分自身の観察者になるということ。頭にきたり憂うつなとき、ちょっと休んで鏡を見る。すると怒りがどこかに消える」

 その横には18歳の悲観論者、イ・ビョンジェがいる。髪を鼻の辺りまで伸ばし、憂うつや悲観、被害妄想をラップで表現した。「母さん、息子は退学者、隣の部屋のソウル大の姉は、僕を見たらどういう気分だろう」で始まるラップが、子を持つ親を泣かせた。イ・ビョンジェは「聞く人が何かを感じたらいいという気持ちで音楽を作ってはいないので、人が僕の曲をいいという理由がさっぱり分からない」と語った。横に座っていたキム・ハオンが「率直なところ。飾り気がないところ。それが、人が君のラップをいいという理由」と言って笑った。

 ペ・ヨンソは、イ・ビョンジェのように率直でありながら、キム・ハオンのように前向きな歌詞を書いた。「二つの姓、二つの名前/二つの暮らし、二つの道を/2本の脚で堂々と歩く」と続くラップ『イ・ロハン』は、母の再婚で二つの名前を持って暮らす自分の物語。聴衆の採点では最高点をマークした。

■夢を追って学校を飛び出す

 番組でトップ3に入った3人は、いずれも「学校の外の子どもたち」だ。「学校にいる時間は、僕がいたくている時間ではなく、僕が望んで得ている学びではなかった。無理して座っている時間を利用して、ほかの何かを実現できると思った」。キム・ハオンの言葉に、イ・ビョンジェが続いた。「夢を探しても、週にたった2時間しか自由時間がないじゃないか。僕はラップ、ギター、サイクリング、ボクシング、キューブまで、やりたいことが本当に多かった」。ペ・ヨンソは「成績で評価して大学に送る工場みたいだった。自分がやりたいヒップホップに没頭するため、学校を出た」と語った。

 学校に行かない時間には何をしたのか。キム・ハオンは「本を読んで、映画を見て、散歩して、歌詞を書いた」と語った。このとき読んだ本の中で、ヴァジム・ゼランドの『リアリティ・トランサーフィン』を最高の一冊に挙げた。人生において望むものを得るために、敢えて苦労はせず、喜びを存分に楽しめと助言している本だ。「『no pain、no gain』という言葉、あまりにも惨いのではないか。苦痛なくして得るものなしというのは、あまりに悲しく思えた。だから、もっと笑いながら楽しみながらやった」

 インタビュー中、「アルバイト」をしていた話も聞かせてくれた。ペ・ヨンソが「スピーカーを買いたくて、食堂で牛や豚を焼いてお金を稼いでいたのを思い出す」と言うと、キム・ハオンは「僕はチキンを焼いていた」と言った。イ・ビョンジェは「僕は酢飯のにおいばかりさんざん嗅いだけど」と言って笑った。ステージの外では平和を歌う「大人びた子ども」も、世間に向けて冷笑を送る憂うつな10代の姿も見当たらなかった。

イ・ヘイン記者
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