俳優ポン・テギュ(36)は終始真剣だった。表情は淡々といていて、声は落ち着いていた。3月22日に放送が終了したドラマ『リターン』(SBS)の極悪無動なハクポムや、過去の作品で演じた茶目っ気のあるコミカルなキャラクターの姿は見当たらなかった。
「芸能人ポン・テギュです」。ソウル市麻浦区のカフェで3月23日、ポン・テギュはこう自己紹介した。「あるときから『芸能人』という呼称がぞんざいに扱われている印象がある。僕も一時は『芸能人ではなく俳優になる』と言っていた。けれど考えてみると、歌手であれ俳優であれ、みんな芸人ではないか。間違ったイメージを自分から変えていこうと、敢えて芸能人という言い方をしている」
『リターン』で分別のない御曹司ハクポム役を演じたポン・テギュは、この作品で「ポン・テギュの再発見」と好評を博した。同ドラマでハクポムは、ずっと年上の相手に対等な言葉遣いでくってかかったり、気に入らないという理由で従業員の頭にガラスのコップを叩きつけたりした。パク・チニ(16話まではコ・ヒョンジョン)、シン・ソンロク、パク・ギウンなどと共に番組を引っ張ったが、腹を立てると子どものようにひっくり返って奇声を上げる熱演ぶりに、「ポン・テギュが本当の主役」という声もあった。
「ハクポムはこれまでのドラマに出てきた悪役とは少し違う」とポン・テギュは言う。「サイコパスのような悪ではない。財閥一家の御曹司として育ち、日常の暴力性を体得した人物。誰に対しても敬語を使わず、障害者向けの駐車コーナーに平気で駐車したり。自然と表現するため努力した」