ソウル市城東区聖水洞にあるクラフトビール醸造所「Amazing Brewing Company」のキム・テギョン代表は、ビールのつまみとして、チーズ盛り合わせを間もなくメニューに追加する計画だという。キム代表は「チーズはビールととてもよく合う。チキンよりいい」と語った。
ビールに最もよく合うつまみとしてチーズを挙げるビール専門家が多い。「チメク(チキン+ビール〈韓国語でメクチュ〉)」という言葉が生じたほど究極の組み合わせと思われていたチキンよりチーズの方が、ビールのつまみとして理想的といわけだ。輸入ビールやクラフトビールが増えているのを受け、ビールのつまみとして絶対王者として君臨してきたチキンの座が危うくなっている。
キム・テギョン代表は「チキンはクラフトビールと合わない」と話している。「これまでの味の薄い国産ビールは、フライドチキンなどの塩気や脂っぽさ、韓国料理の塩気や辛さを洗い流してくれる役割を果たしていた。しかし、風味豊かなクラフトビールに合わせると、チキンでは役不足だ」。さまざまな味の輸入・クラフトビールに慣れてきた消費者たちも、チキン以外のつまみを添え、ビールを味わうことを楽しんでいる。牛乳や羊乳などの原料、生産地、製造過程、熟成によって味が千差万別のチーズは、ほかのどんなつまみよりも選択の幅が広いという長所がある。
これまでチーズは、代表的なワインのつまみとして認識されてきた。しかし、チーズ・アカデミー「フロマージュ」のキム・ウンジュ代表は「そうではない」と話す。「ワインとビール、韓国の伝統酒とチーズを何度もペアリングしてみたが、ビールのペアリングが一番簡単だった。ビールは基本的に甘みがある上、やや酸味もあるため、チーズだけでなく、ほかのメニューとも合う。また、炭酸がチーズの味や油分を口の中で洗い流す役割も果たしている。ワインの中でも特に赤ワインは苦く渋みのあるタンニンを多く含んでおり、チーズとぶつかるケースが多い」
相性のいいビールとチーズを探すための基本公式は「似ているか、同じ重量感のあるビールとチーズがよく合う」ということ。キム・ウンジュ代表は「モッツァレッラのように水分が多くソフトなチーズは、ラガーのように軽く酸味のあるビールが、ゴルゴンゾーラなど塩気や香りが強いチーズは、ホップの香りが強いスタウト、ポーター、インディア・ペールエールとペアリングしたところ、よかった」と話している。相反する重量感、すなわち強いものと強いものの組み合わせではなく、強いものと弱いものの組み合わせを試してみるのもよい。「スタウトには、脂肪分が多くソフトなクリームチーズがよく合うとたびたび感じていた。濃いエスプレッソに牛乳を加えたとき、ソフトで豊かな味わいが楽しめるのと同じだと言えるのではないか」
輸入食材を手掛けるグルメF&Bコリアのイ・ヨンス理事は「絶対的公式はない。個人的には、オランダのゴーダチーズのうち王室御用達のベームスター、羊乳でつくったスペインのマンチェゴが、さまざまなビールとまんべんなく合うと思う」と勧めた。