タイムスリップ物があふれる韓国ドラマ、軒並み苦戦

『名不虚伝』『マンホール』も8月スタート、似たような設定ばかりで食傷気味
今年放送の類似ドラマ、ほとんどが視聴率で苦戦

 8月12日から放送が始まったドラマ『名不虚伝』(tvN)。キム・ナムギル演じる主人公、朝鮮王朝最高の医官といわれる許任(ホ・イム)は、国王にはりを打つ際にミスをして罪人になった。兵士に追われ、気を失った許任が目を覚ました場所は、2017年のソウル・清渓川だった。ぎらつく夜の街から救急車、エアコンに至るまで、許任の目には「驚天動地の光景」と映る。

 一方、8月9日から放送が始まったドラマ『マンホール 不思議の国のピル』(KBS第2)の主人公もタイムトラベラーだ。ポンピル(JYJジェジュン)は、片思いの相手スジン(元AFTERSCHOOLユイ)の結婚式が迫る中、これを阻止するため高校時代に戻る。神秘的な光を放つマンホールが、過去と現在をつなぐトンネルとして登場する。

タイムスリップ物があふれる韓国ドラマ、軒並み苦戦

 時間の流れは一定という常識を覆す「タイムスリップ」ドラマが次々と登場している。主人公が時間の流れに逆らったり、互いに異なる時間軸がつながったりして、劇的な効果を高めている作品だ。しかし、似たような設定が繰り返され、新鮮味が落ちるという指摘もある。

 まだ放送開始直後ではあるが、『名不虚伝』は視聴率4%、『マンホール』は2%(ニールセン・コリア調べ)台にとどまっている。『名不虚伝』のように医師が時空を超えるドラマとしては、2012年に『Dr.JIN』(MBC)と『シンイ-信義-』(SBS)が放送されている。『マンホール』もまた、日本に似たような設定のドラマ『プロポーズ大作戦』が存在し、既に2012年にテレビ朝鮮がリメイクしていることから、既視感があるという反応が相次いでいる。

 今年に入って放送されたほかのドラマも、ほとんどが視聴率の面で苦戦している。『最高の一発』(KBS)は最高視聴率5.5%にとどまり、『シカゴ・タイプライター』と『明日君と』(tvN)は4%を超えることができなかった。『師任堂 色の日記』(SBS)は、当初16%を超えていた視聴率が徐々に下がり、半分程度の水準で放送を終えた。

 タイムトラベルを活用すると、歴史ドラマと現代ドラマ、サスペンスとロマンスを結合させるといった具合に、ストーリーを豊かにすることができる。ドラマ評論家のコン・ヒジョンは「本来は話にならないストーリーでも、とりあえずタイムスリップを前提にしておけば可能なストーリーになる。制作陣の立場からすると、手軽に蓋然性と共感が得られる魅惑的な仕掛け」と語った。ファンタジー文学の古典『タイムマシン』が登場したのは19世紀のこと。それほどに、時間移動は人類の好奇心を刺激し続けてきた素材でもある。

 カギは、いかに差別化するかという点にある。実際、近年ヒットしたタイムスリップドラマは「プラス・アルファ」の部分が成功の要因に挙げられる。『寂しくて光り輝く神-鬼』(tvN)は、死の悲劇をロマンスに加味したストーリーを打ち出し、ケーブルチャンネルのドラマとしては初めて視聴率20%を突破した。『トンネル』(OCN)は、無駄のない展開と主演・助演陣の粒ぞろいの演技力で好評を博し、OCN最高の視聴率(6.3%)をマークした。

 近ごろの韓国ドラマはこうした設定を半分しか活用していない、という指摘もある。梨花女子大国文科の金美賢(キム・ミヒョン)教授は「海外では未来を想像させるSF的な装置としてもタイムスリップを積極的に活用しているのに対し、韓国のドラマは昔に戻る後ろ向きの手法ばかりを繰り返しているのが実情」と語った。

タイムスリップ物があふれる韓国ドラマ、軒並み苦戦

チェ・ミンギ記者
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