韓国テレビ界で目立つ「おじさん」の活躍

-テレビで活躍する40代の男たち
クイズを解いて最新のトレンドを学び、母親の前では娘のように優しい
日常に疲れたときは果敢な逸脱も

典型的な「男らしさ」は崩れゆく傾向

▲tvN『時を駆ける男』で、若い世代に追いつこうとチャレンジするシン・ヒョンジュン、チェ・ミニョン、チョ・ソンモ(写真左から)/写真=tvN
▲ ▲tvN『時を駆ける男』で、若い世代に追いつこうとチャレンジするシン・ヒョンジュン、チェ・ミニョン、チョ・ソンモ(写真左から)/写真=tvN

「今回の新製品は、わが社の立場からすると、“極めて良好”です。デザインも“かっこよく”、“率直に言って大当たり”です」

 これは、SBSのドラマ『超人家族』で、アルコールメーカーの課長ナ・チョンイル(パク・ヒョククォン)が役員の前で立て板に水を流すようにまくしたてるせりふだ。中学生の娘と会話したくて新造語を一生懸命学ぶ余り、商品の戦略発表にまでぼろぼろと出てしまったというシーン。彼は、オフィスの後輩に学んだラップを娘の前で披露し、面白い話をしてやるといって寒々しい「おやじギャグ」を飛ばしては一人でくすくす笑うという有様で、場の空気を気まずいものにしてしまった。

韓国テレビ界で目立つ「おじさん」の活躍

■コミュニケーションのために学ぶ

 今や、おじさんの全盛期だ。このごろテレビのバラエティー番組やドラマでは、おじさんに分類される40代前後の男性が全方位的に活躍している。おじさんは、旧式でありながらも新式にあこがれる。自分がよく知らないものを、役に立たないとかみっともないとか罵ったりしないという点で、権威的な「年寄り」とは区別される。

 tvNが3月31日から放送する『時を駆ける男』は、こういう姿を番組のコンセプトに据えた。シン・ヒョンジュン、チョン・ヒョンドン、チョ・ソンモなど平均年齢42歳のおじさん6人が、クイズを解いてトレンドを追いかけるという内容だ。イ・ウォンヒョン・プロデューサー(PD)は「年寄りではなく、コミュニケーションの可能性があるおじさんたちの姿を見せたい」と語った。

■母親の前ではまだ子ども

 おじさんは、生物学的・法的に成人だが、押しも押されぬ大人というわけではない。テレビ朝鮮の新バラエティー番組『好きなように行こう』は、芸能人をしている子どもが母親を連れて海外に出かけるという旅行記だ。3月20日の初放送では、大人の息子が母親と同じベッドで眠るというエピソードが登場した。歌手パク・ヒョンビンは、ベッドが2つある隣室をうらやましがったが、キム・ジョングクは「全然平気」と言い、ベッドで横になって「(母親の)寝間着のズボンがすべすべしてる」と、優しそうに振舞ったりもした。

 SBS『醜い俺たち同士』では、芸能人の母親がスタジオにやって来て、独身の息子の日常を見守る。番組では、おじさん出演者の年齢を新生児のように表現する。歌手キム・ゴンモは生後584カ月、お笑いタレントのパク・スホンは生後550カ月だ。

■家族と同じくらい、自分自身も大事

 家族に対する責任感は、おじさんにとっても重要だ。しかし家族と同じくらいに、おじさんにとっては自分自身も大切。疲れ切って倒れ込むまで前しか見ずに走ってきた、これまでの父親たちとは異なる。

 4月放送開始を予定しているテレビ朝鮮の『おじさん独立万歳! そこで会おう』は、歌手イ・ヒョヌ、俳優キム・スロ、シェフのチェ・ヒョンソクなど日常につかれたおじさんが集まってひっそりした「アジト」に3泊4日滞在し、再充電する姿を追う。MBCが今年の旧正月の特集として放送した『家出宣言-四十春期』でも、40代のおじさんチョン・ジュナとクォン・サンウが計画もないままロシア旅行に出かけた。だしぬけに自由と出くわした二人は、きちんと遊ぶすべも分からずぶつかり合いもしたが、雪原で裸になっていたずらしたり、つかの間、青春のころに戻っていた。

 おじさんの登場は、「男らしさ」というイデオロギーが崩れつつある傾向を示している。韓国の男性は、家族を引っ張る家長として常に重々しく、強く、大人らしくあることを要求されてきた。しかし、男性の特権であると同時に重荷でもあった家父長的秩序は、次第に解体されつつある。安京煥(アン・ギョンファン)ソウル大学名誉教授は、家父長社会以降の男性像を模索した『男子とは何か』において「20世紀までは、おおむね男子の時代だったが、新世紀は明らかに異なっている。父親世代の重荷をふわりと投げ捨てなければならない。それでこそ、自分も、家族も生きることができる」と主張した。

チェ・ミンギ記者
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