ナ・ヨンソク・プロデューサー(PD)は、バラエティー番組成功の公式を会得しているようだ。『新西遊記』『新婚日記』など意図的に冒険に乗り出す小品と、『花より〇〇』『三度の食事』のように、こうと決めて仕事にかかる成功作を交互に送り出している。そして、また新たなフォーマットを試みたtvNの『ユン食堂』では、スマートで老練なところがますます輝きを放った。初回6.2%から出発して、3月31日の第2回では9.6%と、視聴率もぐんと上がった。
女優ユン・ヨジョンをはじめイ・ソジン、チョン・ユミ、シン・グがインドネシアのバリに近い小さな島へ行き、焼肉レストランを1週間営むというのが番組のストーリー。「食」と「旅行」をまたもアレンジしつつ、うっとりするような風景(『花より』シリーズ)、料理と労働(『三度の食事』シリーズ)といった前作のエッセンスをそのまま盛り込んだ。チョン・ユミを除けば、いずれも前作に登場したことのあるキャストだ。
あやうく二番煎じになるところだったこの料理に、ナPDは「商売」という破格のスパイスを追加して、新たな味へと仕上げることに成功した。ナPDのこれまでの番組で、料理というものは出演者同士がはしゃぎながら作り、おいしければめでたし、まずくてもまあまあというものだった。今回は違う。代価を受け取って、それに見合う料理を出さなければならない、生業の現場に招待されたのだ。
都市の数多の社会人が、日常に疲れるたび、「全部放り出して景色のいい田舎に行って、食堂でもやるか」と想像の翼を広げる。『ユン食堂』は、その想像を代わりに実現してやりながらも、職業倫理には忠実だ。誰もキャストの正体を知らないほかの国で、ひたすら料理で客の足を止め、心をつかまなければならない。その過程は、スポーツの試合のように緊張感にあふれている。
旅行前の雑談や飛行機に乗る旅情といったものは省略・圧縮するかわり、料理を練習し、準備する過程に集中した。他人にお金を払ってもらうということは、思っているよりずっと難しく、重い責任が伴うということを悟らせる。韓国式のミックスコーヒーを愛し、はしを使った食事を楽しみ、メニューにないキムチやマッコリ(韓国の濁り酒)、焼酎までねだる外国人客の反応も興味深い。
俳優4人は、突拍子もない組み合わせのように見えるが、ふたを開けてみるときれいな調和を見せた。もっぱら料理を担当する食堂の主人ユン・ヨジョンは、70代の女優がバラエティーでも自分の名前をつけて存分に主役を演じられるということを証明した。飲み物担当のイ・ソジンは、ナPDの番組に出演した経験が多くて安定的。厨房補助のチョン・ユミはバラエティー駆け出しで、新鮮な活力を吹き込んでいる。81歳のシン・グは、下っ端の「アルバイト」役を務めた。年輪からにじみ出る余裕と知恵で、後輩や客をそっと支える。「映画『マイ・インターン』のロバート・デ・ニーロのように、最近の若い世代が夢見る本物の大人の姿を体現した」(チェ・スヒョン記者)。
「地上の楽園のようなテレビの画面を見ていると、じめじめ、べとべとした不快さすら恋しくなる。このところソウルではPM2.5が最悪なので、代理満足(自分ではかなえられない欲求を他者の行為により満たすこと)効果は極大化した」(チェ・ミンギ記者)。ただし、残念な点もないわけではない。ユン・ヨジョンのヘアスタイルだ。「散髪で舞った髪の毛が焼肉に入るんじゃないかと心配で、頭巾を付けるといいと思う」(キム・ユンドク記者)。過剰までに善良で美しく表現されるチョン・ユミと、タフガイのイ・ソジンを結び付けようという演出意図もいささか気になる。とはいえ、「食べる」という人間にとって第一の本能に基づき、人生のロマンと理由を引き出すナPDの努力には拍手を送りたい。