「役をもらったので、最後までやらなければ。ばったり倒れるまでは」
タレントの故キム・ヨンエ(享年65)は、以前受けた雑誌のインタビューで、このように語っていた。ドラマ『太陽を抱く月』の撮影中にすい臓ガンと診断されていたと、後に明かしてからのことだった。当時、キム・ヨンエは「演技は私にとって酸素と同じ」と語っていた。
キム・ヨンエが9日、すい臓ガンに伴う合併症で死去した。所属事務所スター・ビレッジ・エンターテインメントは「故人は2012年にすい臓ガンと診断され、手術を受けた。昨年冬に容態が悪化して治療を受けたが、世を去った」とコメントした。
キム・ヨンエはガン治療を受けつつも演技を止めなかった。闘病しながらドラマ『わが愛しの蝶々夫人』、映画『弁護人』、『仁川上陸作戦』などに出演した。昨年8月には、KBSの週末ドラマ『月桂樹洋服店の紳士たち』で洋服店の女主人「チェ・ゴクチ」を演じた。10月以降4カ月にわたって入院したが、闘病していることを外部には知らせず、病院から外出証をもらって撮影を続けた。
当初の計画通り50話までは撮影を終えたものの、『月桂樹』人気で4回の延長放送が決まった際には、遂に出演できなかった。ドラマでは、最後に田舎へ静養に行く様子が描かれた。今年2月26日に放送された最終話にはキム・ヨンエが登場せず、健康が悪化したのではないかという推測が出回た。『月桂樹洋服店の紳士たち』は、キム・ヨンエの遺作となった。
キム・ヨンエは、1971年にMBCの公募タレント3期生としてデビューした。同年の『捜査班長』を皮切りに『三姉妹』、『風雲』(82)、『根の深い木』(83)、『氷点』(90)、『兄弟の川』(96)、『メン家の全盛時代』(02)などのドラマ、『冬の旅人』(86)、『燕山日記』(88)、『海賊、ディスコ王になる』(02)、『グッバイ・マザー』(09)などの映画に出演した。朝鮮王朝時代の妓生(キーセン=芸妓)から女性実業家まで、さまざまな役割を渡り歩き、特に気配り細やかで温かい母親の役をよく演じた。90年代には食品会社「オットゥギ」のCMモデルとしても活躍し「オットゥギのおばさん」とも呼ばれた。