『男子衝動』で14年ぶりに演劇の舞台に立つリュ・スンボム

チョ・グァンファの演出デビュー作を再演…リュ・スンボム初主演
演劇としては珍しく、男性の観客が4割…全席売り切れ
「男らしさ」にとらわれ不幸に至る、木浦のごろつき役をリアルに演技

『男子衝動』で14年ぶりに演劇の舞台に立つリュ・スンボム

 重々しいベースギターの旋律がとげとげしく聞こえた。アル・パチーノの映画『ゴッドファーザー』のポスターが張られた古い日本家屋風のステージに、俳優リュ・スンボムが入ってくると、ライトが下から彼を照らし出した。

 頬骨は飛び出し、口元や眼差しは図々しそうで、悪党に見えた。生まれついての「ちんぴら」といった風体だった。「俺の名前はチャンジョンよ。イ・チャンジョン。達者で元気のいい大人になれと、じいさんに付けてもらった名前さ。俺には気に入ったやつがいる。それは『コルレオーネ』。映画『ゴッドファーザー』の『アル・パチーノ』だ」。

 今月16日、演劇『男子衝動』にて演劇の初主演を務めたリュ・スンボムは、肩の力を抜き、興味をそそる姿で現れた。「俺がファミリーを守るとしたら、どんなことだろうと容赦なく攻撃してやる。俺は強いんだ! 尊敬される家長! それが俺の夢さ」。ぐずぐずの木浦なまりをわめきちらすリュ・スンボムは、「男前であること」にとらわれ、暴力的な方法で家族を保護しようとして、逆に皆を不幸に陥れる「木浦のごろつき」イ・チャンジョンという役に、何の不足もなくぴったりと合っていた。

 リュ・スンボムは2000年に映画『ダイ・バッド~死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか~』でデビューした後、『ワイキキ・ブラザーズ』、『品行ゼロ』、『死生決断(2006)』などに出演し、韓国映画界の「アンファンテリブル」「非主流キャラクター」として注目された。さらに、映画『生き残るための3つの取引』(2010)、『ベルリンファイル』(2012)などには腐敗したエリート検事や北朝鮮諜報部の冷徹な殺し屋といった役で登場し、演技の幅を広げた。リュ・スンボムが演劇の舞台に立つのは、03年の『蜚言所』以来14年ぶりだ。現在、チケットオープンされた3月12日の分まで全席売り切れている。演劇の観客は、通常であれば女性が9割以上を占めるが、この作品は男性の割合が4割に達する。

 1997年にチョ・グァンファが演出デビューを飾った『男子衝動』は、当時、韓国の演劇像を揺さぶった作品だった。俳優アン・ソクファンがイ・チャンジョンを演じて注目された。再演を求める声が多い中、04年以降休眠していたが、「チョ・グァンファ20周年」を記念して今年再びステージに上った。「適当な俳優がおらず、商業的なやくざ映画が乱舞していて、演出の意図が誤って解釈されるかもしれないので、気安く決定はできなかった」とチョ・グァンファは説明した。

 リュ・スンボムは、母親役としてダブルキャストされた女優ファン・ヨンヒから木浦なまりを学んだ。自閉症を持つ末の妹「ダレ」を手下が襲おうとして感情を抑えきれない場面では、せりふを2、3回とちることもあった。しかし、「なまもの」のようなリュ・スンボムの演技には、虚構を現実のように見せる力があった。父親を演じたキム・レハや、初演時から一緒で母親を演じる女優のファン・ジョンミン、自閉症持ちの歌う妹ソン・サンウンなど、どの顔ぶれもこれ以上はなく、欠かすこともできないステージだった。初舞台のカーテンコールのラストでは、キム・レハがリュ・スンボムをしっかり抱きしめた。そこでようやくリュ・スンボムも顔を緩め、明るく笑った。公演は3月26日まで、大学路のTOM1館にて。

チェ・ボユン記者
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