脚本家キム・ウンスクの想像力が輝くドラマ『鬼』

3話で視聴率12%
感嘆の声も漏れてしまうキム・ウンスク印のファンタジー
名ぜりふよりも、キャラの個性に集中……コン・ユ&イ・ドンウクの共演はまだギクシャク

脚本家キム・ウンスクの想像力が輝くドラマ『鬼』

 本当に不親切な番組のタイトルだ。だしぬけに『鬼』なのだから。タイトルだけでは、どういう内容のドラマなのか全く読み取れない。「不死の人生を終わらせるため、人間の花嫁が必要な鬼。鬼と奇妙な同居を始めた、記憶喪失の死神。その2人の前に、鬼の花嫁と言い張る少女が現れたことで繰り広げられるロマン説話」。大まかな説明を読んでも、不親切なことに変わりはない。

 tvNの金土ドラマ『寂しくて光り輝く神-鬼』(以下『鬼』)は、『太陽の末裔』(KBS第2)を手掛けた脚本家キム・ウンスクとプロデューサー(PD)イ・ウンボクの2人が、8カ月ぶりに再び意気投合した作品だ。『太陽の末裔』は大変な好成績を記録したが、「せりふばかりで叙事的な部分がない」という批判も浴びた。最高のドラマ脚本家の一人に挙げられるキム・ウンスクにとっては痛い指摘だったのだろう。『鬼』の制作発表会でキム・ウンスクは「『うわあ、キム・ウンスクがこんなことも?』という反応が出るように、変わったところを見せたい」と語った。

 まずは、大作レベルの戦闘場面で第1話の口火を切った。高麗時代最高の将帥(コン・ユ)が、王のねたみを受けて死刑にされる。戦場で数多くの命を奪った罪の代償として鬼になり、永遠に死ねない罰を受ける。自分の体に刺さった剣を見ることができる女性と会えば死ねるようになるが、彼が939歳になった2016年、ようやくそんな女性(キム・ゴウン)と出会う。

 『鬼』は、荒唐無稽な設定という点ではどんなドラマにも劣らないが、それでも視聴者を強力に引っ張り込む。「キム・ウンスク・マジック」という言葉に異議を唱えるのが難しいくらいに、この脚本家が描き出す「とんでもない世界」に夢中になる。第1話の視聴率は6.3%で、tvNのドラマ第1話としては歴代最高の記録を打ち立て、第3話では12.4%と2倍近くにまで跳ね上がった。

 「『叙事的な部分に底力が足りず、ぱらぱら出て来る単発的なせりふに頼っている』という批判を克服した姿が見られる。特異なせりふを自制するかわりに、キャラクターの個性をもっと生かした」。キム・ウンスクのドラマに毎回登場する「名ぜりふ語録」はまだ出てきておらず、かえって怪しく思えるほどだ。キャストの好演も一助になっている。金に困り、家や学校でいじめられるヒロイン像は、下手するとふわっと宙に浮いてしまいかねないドラマが現実にとどまるようサポートしている。

 キム・ウンスクが得意とする甘いロマンスは、依然として生きている。化け物が出て来る物語なので、暗い話だろうと心配しがちだが、カナダのケベックとソウルを行き来する、童話のように素敵でファンタジックなシーンは、そんな予想を覆す。キム・ウンスクのラブコメに出て来る男性主人公は、財閥2世から勇猛な軍人へ、そして超能力を持つ鬼へと、次第に多くの能力を持つようになってきている。今や、大金持ちというだけでなく、ヒロインがロウソクを消したらいつでも現れて危機から救ってくれる。

 一つ屋根の下で暮らすことになった鬼と死神(イ・ドンウク)の深い友情は、ドラマのもう一つの軸になる。ぶつかり合いながらも心の中ではお互いに相手を心配している様子が、細かな面白味を増している。だが今のところ、男性主人公2人はまだうまく息が合っていないようだ。「ジョークをやりとりする場面がぎごちなかったり退屈だったりして、番組の展開を妨げることが割とある」。

 このドラマは、最終的には死に関する物語だ。鬼が永遠の人生を終わらせたいと思う理由は、愛する人の死をずっと見守るしかないという苦痛から抜け出すため。しかし、いざ自分を死へと引き渡す女性に会うと、生きることへの未練で苦しむ。人は誰でも、日常で多くの死を間接体験し、最後は例外なく死に至る。このドラマが世代を超える共感を得られるポイントだ。「小学生の娘と一緒に座り、2人して口を開けてドラマを見た。死すらロマンスの要素に昇華させ、子どもですら引き込まれる、そんな想像力の果てはどこにあるのかと感嘆の声が漏れた」。

チェ・スヒョン記者
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