来年の韓国映画 歴史や社会風刺の作品多数

【ソウル聯合ニュース】来年の韓国映画界は、歴史の痛みや悲しみを描き、社会を風刺する作品が多数登場する見通しだ。これまで扱いにくかった政治・社会的なモチーフも映画化される。その多くを大手の製作配給会社が手掛けることに「歴史の痛みを商業化する」という批判が出る一方で、社会の求めに応じたものとの分析もある。

 映画「1987」(原題、以下同じ)は、1987年6月の民主抗争のきっかけとなった大学生・朴鍾哲(パク・ジョンチョル)さんの拷問死を扱った。チャン・ジュンファン監督がメガホンを取り、CJ E&Mが製作配給する。キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、カン・ドンウォンの豪華キャストでも期待を集める。CJ E&Mの関係者は「朴鍾哲拷問致死事件から6月抗争まで、韓国現代史の分水嶺(ぶんすいれい)となった悲しくも熱い1987年の話を描く」と紹介した。

 ショーボックス制作配給の「タクシー運転士」(チャン・フン監督)は、1980年の光州民主化運動の惨状を世界に伝えたドイツの特派員をソウルから光州まで乗せたタクシー運転手の実話に基づく。ソン・ガンホがタクシー運転手を演じる。

 最近クランクアップした「軍艦島」(リュ・スンワン監督)は、来年最大の期待作の一つに挙げられる。日本の植民地時代に端島炭坑(軍艦島、長崎市)に強制徴用された朝鮮半島出身者約400人の命がけの脱出を描いた。ファン・ジョンミンやソ・ジソブ、ソン・ジュンギらが出演、制作配給はCJ E&M。

 「父の戦争」(イム・ソンチャン監督)は、1998年に南北軍事境界線の板門店にある国連軍と北朝鮮軍との共同警備区域(JSA)で起きたキム・フン韓国軍中尉の謎の死をめぐり、真相に迫ろうとする父親にスポットライトを当てた。デリケートな事件がモチーフとあって出資者探しが難航していたが、最近出資者が現れ、製作が確定したようだ。

 「代立軍」(チョン・ユンチョル監督)は20世紀フォックスコリアが製作配給する5作品目の韓国映画として関心を集める。16世紀末の壬辰倭乱(文禄・慶長の役)で逃亡した王の代わりに朝鮮を守ることになった息子の光海と、軍役を逃れたい人からお金を受け取り軍役に就いた代立軍の話だ。代立軍の大将をイ・ジョンジェ、光海をヨ・ジングが演じる。

 「南漢山城」(ファン・ドンヒョク監督)は朝鮮王朝時代の17世紀に清に攻め込まれ南漢山城に追い詰められた王と、民衆のための道を模索し対立する大臣たち、民衆の生きざまを描いた。イ・ビョンホン、キム・ユンソク、コ・スらが出演する。

 社会派映画も相次ぎ封切られる。来年1月公開の「ザ・キング」(ハ・ジェリム監督)は韓国の近現代史を背景に、権力を夢見た男と権力のお膳立てをする男を中心に権力の浅ましさを暴く。チョ・インソンとチョン・ウソン主演。

 「特別市民」(パク・インジェ監督)は3選を目指すソウル市長を通じた政治風刺の作品だ。チェ・ミンシクが初めて政治家役に挑戦する。

 韓国では数年前から社会派映画がヒットしている。「弁護人」(邦題、以下同じ)「ベテラン」「インサイダーズ/内部者たち」などがその代表だ。つらい歴史を扱った映画についても、大手製作配給会社の関係者は「歴史的なモチーフを大衆向けジャンルに溶け込ませることができればヒットもあり得る」と話す。また、人気俳優をキャスティングし大作に仕上げることで、観客の関心を引いている。

 ただ、今現在、韓国の政局と社会が混乱し、来年は大統領選も控える中で、今までのヒットの法則が通用するかは定かでないとの指摘もある。

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