事前制作が韓国ドラマ市場の新たなトレンドになっている。最大の韓流ドラマ市場・中国は、このところ海外ドラマの完成作品全体に対する事前検閲を行っているため、製作費がかさむ韓国の大作番組を中心に、事前制作が活発に行われている。韓国の地上波テレビ局と中国の動画サイトで初めて同時放送され、大ヒットした『太陽の末裔』(KBS2)はもちろん、現在放送されている『やけに切なく』(KBS2)、『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』(SBS)、『シンデレラと4人の騎士』(tvN)はいずれも事前制作作品だ。さらにSBSの『師任堂-色の日記』、KBS第2テレビの『花郎:ザ・ビギニング』、tvNの『アントラージュ』も、今年放送を控えている。
撮影と放送がほぼ同時に行われる従来のシステムでは、俳優が点滴を受けて撮影に臨んだり、放送事故が起きたりすることもあった。十分な時間を確保して完成度を高めることができる事前制作は、韓国ドラマの制作環境に深く巣くう病弊と指摘されてきた「紙切れ台本」や徹夜撮影・生放送の望ましい代案と考えられてきた。しかし最近の事前撮影ドラマの成績は、『太陽の末裔』を除くと、期待に応えられるほど十分なものではない。『やけに切なく』と『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』は、それぞれの放送時間帯で視聴率最下位が続いており、『シンデレラと4人の騎士』も良い評価は得られていない。
撮影と放送をほぼ同時に進めるシステムは、副作用も大きいが、視聴者の反応を瞬時に反映させることができる。事前制作ドラマは、展開過程に問題点が指摘されても補完が難しく、視聴者と「リアルタイムのコミュニケーション」を取ることもできない。番組編成が遅れると、ドラマの価値も落ちる。実際、SBSの『愛してる』(2008)、MBCの『ロードナンバーワン』(2010)、SBSの『パラダイス牧場』(2011)など、既存の事前制作ドラマはおおむね低調な視聴率に終わった。さらに、『太陽の末裔』で主役を演じたソン・ヘギョは「事前制作ドラマは後半と前半を逆に撮影することもあり、感情移入がとても難しい」と語ってもいる。
事前制作ドラマは主に中国市場を狙っているため、中国での人気が期待される要素に集中し、韓国国内の視聴者を取り逃がしている、という指摘もなされている。実際、『やけに切なく』と『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』の場合、中国の動画サイトでは多くのビュー数を記録している。ある地上波テレビ局のドラマ関係者は「あまり流行に乗らない歴史ドラマや、かなり手間がかかるジャンルのものは事前制作が有利だが、トレンドを敏感に反映しなければならないメロドラマは、徹夜撮影をすることになっても『紙切れ台本』の方がましのようだ」と語った。最近では、tvNの『シグナル』、『チーズ・イン・ザ・トラップ』のように、半分以上撮影を終えた段階で放送をスタートさせる「半・事前制作」ドラマも増えてきた。