すっかり食傷気味の李舜臣ドラマ、なぜKBSは作り続けるのか

理由は2014年の習近平ソウル大講演か

すっかり食傷気味の李舜臣ドラマ、なぜKBSは作り続けるのか

 豊臣秀吉が送り込んだ日本軍と戦った李舜臣(イ・スンシン)将軍役の俳優チェ・スジョン、壬辰倭乱(文禄・慶長の役)、そして亀甲船。KBSが「放送の日」を迎えるにあたり、3日夜に放送した全5話のドラマ『壬辰倭乱1592』(視聴率9.2%、ニールセン・コリア調べ)=写真=は、すっかり食傷気味となったテーマの新たなバリエーションなのだろうか。チェ・ミンシクが李舜臣将軍を演じた映画『バトル・オーシャン 海上決戦』(原題『鳴梁』)は2014年に観客1700万人を動員、昨年はKBSでキム・ソクフンが李舜臣将軍に扮(ふん)した大河ドラマ『懲毖録』が放送された。キム・ミョンミン主演で李舜臣将軍の人間的苦悩を描いたKBSドラマ『不滅の李舜臣』(04-05年)は今も話題に上るが、人によっては「またか」と感じてもおかしくない状況だ。では今、なぜまた、それもKBSで李舜臣将軍を取り上げるのだろうか?

 この謎を解くカギは14年に訪韓した中国の習近平国家主席の講演にあった。習主席はソウル大学で「これまでの歴史で危機が発生すると、韓中両国は互いに助け合いながら共に乗り越えてきた。400年前に壬辰倭乱が発生した時、両国国民は共に戦場に向かった」と述べた。KBS関係者は「このため中国中央テレビと協力して韓中合作をすることになり、今年3月に撮影をすべて終えた」と話す。

 KBSは徹底した時代考証により目新しさを加えようとした。ドキュメンタリー・プロデューサー出身のキム・ハンソルが演出を手がけ、「事実に基づいた歴史ドラマ」を作ろうとした。第1話に登場した泗川海戦では、これまでのドラマや映画で描かれた交戦の「お約束」を打ち破った。『不滅の李舜臣』などのドラマでは朝鮮水軍が日本の火縄銃の射程距離外で火器を使い、一方的な攻撃をして勝利したかのように描かれてきたが、このドラマでは朝鮮・正祖時代に登場した「水操規式」(朝鮮時代の水軍規範)にある「敵船200歩以内に入った時に射撃する」という内容に着眼した。このため同ドラマでは亀甲船が日本艦隊の目を引いている間に接近した朝鮮水軍が近距離から直射射撃を行う。映画『バトル・オーシャン 海上決戦』に出てきた白兵戦(刀・剣・槍などを使った至近距離での戦闘)もない。朝鮮軍が1人の戦死者も出さず、負傷者のみ3人だった泗川海戦で、日本軍に有利な白兵戦が行われていたとしたら、死者・負傷者はもっと多かったはずだと推測したからだ。

 ドラマ評論家でもある忠南大学国文科のユン・ソクジン教授は「これまでの李舜臣将軍関連作品に比べ、歴史考証に忠実にしようと努力した跡がうかがえる」としながらも、「戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)配備などで北東アジア情勢が微妙な状況でこのドラマが作られたことについては、政治的な解釈が可能な面もある」と語った。

ヤン・ジホ記者
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