場面その1。今月9日、ソウル市光化門の教保文庫にある音盤売場前。朝から10-20代の女性およそ100人が列を作った。この日発売される、9人組ボーイズグループ「EXO」の3rdアルバム「モンスター」を買うために並んでいた。EXOは、公式ファンクラブの会員だけでもおよそ370万人(中国・日本含む)に達する、韓国最高の人気アイドルグループだ。EXOの新譜を買おうと熱心なファンが殺到し、デジタル音源時代になって姿を消していた風景が、再びよみがえったのだ。香港から来たという22歳のファンは「中国語版のアルバムはもちろん韓国語版のアルバムも欲しいので、飛行機に乗って来た」と語った。所属事務所のSMエンターテインメントによると、EXO3rdアルバムの先行注文分66万枚は、わずか10日で品切れとなった。
場面その2。今月16日、韓国最大のデジタル音源サイト「MelOn」の人気チャートで、EXOの新曲「モンスター」が2位に後退した。発売から1週間もしないうちに、1位の座を明け渡したのだ。少し前、デビュー1年目の新人ガールズグループ「TWICE」の曲が1カ月近くもトップを守り続けていたのと比べると、失望させられるような結果だ。EXOはこれまでも、「GFRIEND」や「SISTAR」など人気ガールズグループに比べ、音源チャートの成績が良くなかった。
いささか矛盾しているように見える上記の現象は、韓国アイドル市場の固着した特徴に由来するもの、という分析が多い。
■「兄さん」のアルバムはひたすら買う
アイドル音楽ファン論を専門的に展開している音楽評論家のミ・ミョ氏(本名:ムン・ヨンミン)は「ボーイズグループはアルバムや公演が、ガールズグループは音源市場やイベントが好調」と語った。男性アイドルは、熱意あふれる10-30代の女性ファンを抱えている。これに対し女性アイドルは、老若男女さまざまな人から好かれる一方、熱意あるファンは少ない。熱意あふれるファンは自らアルバムを買い、公演に行く。
こうしたファンは、アルバムも何枚かずつ買っていく。アルバムには、ファンミーティングなどに出席するチャンスが得られる抽選券のような特典が入っているからだ。多ければ多いほど「兄さんたち」を間近で見られる可能性が高まる。似たようなアルバムでも、何枚も買う。韓国音楽コンテンツ産業協会によると、2012年にデビューしたEXOは、これまでに韓国内外で計500万枚のアルバムを売った。このうち25%ほどが、いわゆる「リパッケージ」アルバムの販売分。「リパッケージ」アルバムとは、以前発売されたアルバムに1-2曲ほど追加し、新たな写真などを加えて再販した音盤のこと。このところ人気を集めているボーイズグループ「防弾少年団」は、昨年発売した2枚のミニアルバムを合わせて「スペシャルアルバム」を出したところ、30万枚以上も売れた。ここ5年のアルバム販売量トップ30内に、ボーイズグループのほかに名前が出ているのは、チョー・ヨンピルと少女時代しかいない。