【ソウル聯合ニュース】韓国の国民的詩人・尹東柱(ユン・ドンジュ、1917~1945年)と尹東柱のいとこで独立運動家の宋夢奎(ソン・モンギュ、1917~1945年)の生涯を描いた映画「東柱」(原題)を製作した理由について、メガホンを取ったイ・ジュンイク監督は「尹東柱の詩はよく知られていても、尹東柱の生と死についてはあまり知られていないため」と説明した。
大ヒット映画「王の男」などで知られるイ監督は12日、聯合ニュースのインタビューに対し、「詩人の生と死を知らずして尹東柱の詩を愛していると言えるか」と話した。
イ監督は5年前、京都の同志社大にある尹東柱の詩碑を見て、「自分たちで殺しておいて、詩だけは愛する? 詩人の人生にはわれ関せずというのは、不道徳なのではないか」と疑問を持ったという。
尹東柱は日本に留学し同志社大に在学中、ハングルで詩をつくったとして治安維持法違反の疑いで逮捕され、1945年2月16日に福岡刑務所で獄死した。
イ監督の疑問は韓国人に対しても向けられた。「尹東柱は福岡刑務所で訳の分からない注射を打たれて死んだが、われわれがそれを詳しく糾明しようとしないのが変だった。一度も糾明すると考えないのは変ではないか。そのことが申し訳ない」と話した。
自身も50歳を過ぎてやっと尹東柱がどのように死んだのか知り、恥ずかしく思い、映画を撮ったと説明した。
映画は後半部で日本の刑事と尹東柱、宋夢奎が「大東亜共栄圏」構想について舌戦を繰り広げるシーンが描かれる。クライマックスであり映画の主題でもある。
イ監督はこのシーンで加害者の矛盾と不道徳性を指摘したかったと話した。ドイツが戦争犯罪について謝罪したのは、英国やフランスなどの周辺国が絶えずナチスの罪状を調査し、証拠を提示して追及したためだが、自分たちは「このような被害にあった」「このように収奪された」と話すだけだった。それに対する反省を示したと説明した。
「東柱」は17日に韓国で公開予定。