『兄への想い』(イ・ハン監督)のハン・サンリョル少佐は、現実に存在しなさそうな20代男性。ニコニコしながら近づいてくる同年代の女性に「国全体が墓なのに、笑えますか?」と叱り、同僚が手渡してくれたアダルト雑誌も「いらない」と払いのける。彼が考えているのは、合唱団の子供たちの安危と戦争のさなかに死んだ妹のことだけだ。息が詰まるほど生真面目で、平面的なキャラクターだ。
それでも、観客が彼を見ながら「そんな人もいるだろう」とうなずけるのは、ハン・サンリョルを演じたシワン(27)のおかげだ。整った目鼻立ちと色白な顔のせいか、彼はこの世に存在しないような“まっすぐな青年”として、不自然ではない。イ・ハン監督はシワンについて、「じっとしていても、まっすぐな考えや行動をする人のように見える」と語った。
映画は6・25戦争(朝鮮戦争)当時、戦争孤児が集まった軍部隊内保育園の合唱団の物語。音楽を専攻していたハン・サンリョル少佐が合唱団を率いる。シワンは「ハン・サンリョルと似ている部分があるとしたら、真面目で冗談が言えないこと。でも、彼は僕よりもはるかに大人っぽい。もし、自分ならあのような状況では、カルゴリのような人間になったと思う」と話した。 カルゴリ(イ・ヒジュン)はハン・サンリョルと対立する人物で、戦いで失った腕のところにフックをはめ込んでいる。戦争孤児を搾取し、軍部隊の補給品を盗み取る。シワンに「カルゴリのような役を演じる考えはないのか」と聞くと、 「やらせてもらえるなら、すると思います。でも、監督が僕にそんな役を任せるでしょうか?」と答えた。
アイドルグループZE:Aのメンバーとしてデビューしたシワンは、ドラマ『太陽を抱く月』で、俳優としての活動を始めた。演じた役は生真面目な秀才。映画『弁護人』では、拷問される大学生を演じた。一躍有名になったのは、ドラマ『ミセン-未生-』でチャン・グレを演じてから。「チャン・グレを演じるには、ハンサムすぎる」という懸念を振り払い、20代を代表する人物となった。
共演したイ・ヒジュンは、シワンのことを「意志が強くて、つまらない人」と表現。飲みに行っても、運動やピアノの練習のため、途中で帰ってしまうのだという。シワンは「ピアノは4カ月間、週に3、4回練習をしたし、指揮はもっと難しかったので、かなり練習しました」と明かした。劇中、ピアノを弾くシーンは全て自ら演じた。彼は「いくつも同時にできない性格。一つを深く掘り下げるのが好きなので、そうしました。そして、演技は暇つぶしではなく、仕事。未熟な部分が多ければ、練習をたくさんするしかない」とし、「つまらなくないです」と付け加えた。
シワンは普段もハン・サンリョルのように、真面目な生活をしているのだろうか。彼は「もしそうでなくても、自分が不利になることをインタビューで話しますか?」と笑った。「僕が演じたキャラクターほど、真面目ではありません。でも、好意的に見てくださる方が多いので、そのようなフリでもいいからするのが、その方たちへの最低限の礼儀だと思います」と語った。シワンが次の映画で演じる役は、詐欺師だ。
『ミセン-未生-』のチャン・グレや『兄への想い』のハン・サンリョルなど、シワンが演じた役は善良で純粋。彼は「好青年のキャラクターを避けなきゃとは考えていない。(避けるということは)過去に執着していることだから」と話した。