セリフ一言が大きな力をもたらすことがある。例えば、岩井俊二監督が演出した『ラブレター』(1995年)は、「お元気ですか?」というワンフレーズが印象に残っている。短いが、情緒的には映画全体を魅力ある作品にした。
では2015年、最もパンチの効いたセリフは何だっただろうか。マックスムービー映画研究所が本紙の依頼を受け、12月14-16日に「今年の名セリフ」を調査した。100万人以上を動員した韓国映画21作と、作品性、芸術性に優れた小規模な低予算映画の興行成績トップ5を提示して行ったアンケートに、1645人が回答した。観客のハートをつかんだセリフは以下の通り。
■5位「教えてあげなきゃ。わたしたちはずっと戦っていると」
1930年代を描いた『暗殺』で、独立軍の狙撃手アン・オギュン(チョン・ジヒョン)が言ったセリフだ。118票を獲得。暗殺団を率いるアン・オギュンは、「噛むことができないなら、吠えてもいけない」という生存理論に屈しない。祖国を取り戻すため、闘争の論理を全身で実践する。光復(日本の植民地支配からの解放)70年の今年、政界で与党は「愛国心」、野党は「親日論争」としてこの映画を活用。光復節に1000万人を突破した。
■4位「空に飛んで行ったあの矢がどれほど堂々としているか」
『思悼』で、思悼世子(ユ・アイン)は的ではなく空中に矢を放ち、このように言う。父・英祖(ソン・ガンホ)が、息子を米びつに閉じ込めて殺したこの悲劇は、若い観客から大きな支持を得た。世の中は既成世代が作り、次世代に“同じように生きろ”と強要するので、窮屈で不確かな若者であればあるほど共感した。250年前のその死を検死するかのようにひも解いていったこの映画を見ながら、父子関係を思い浮かべた観客も多かった。132票。
■3位「モヒートに行って、モルディブで一杯やろうか」
俳優イ・ビョンホンを泥沼から救い出した一言だった。『内部者たち』で「政界ヤクザ」のアン・サング(イ・ビョンホン)は、「モルディブに行って、モヒートで一杯やりながら暮らそう」という昔の恋人の言葉を覚えていて、このセリフを放つ。劇場が笑いの渦に包まれた。全羅道の方言に加え、人間味があふれていて、暗く緊張感が張り詰めたこの映画に息抜きのポイントを作った。このセリフはイ・ビョンホンのアドリブから誕生したという。167票を獲得。
■2位「俺たちお金はなくても、プライドはある」
『ベテラン』でソ・ドチョル(ファン・ジョンミン)は、賄賂を受け取る同僚刑事にこのセリフを放つ。財閥の御曹司チョ・テオ(ユ・アイン)との戦いに勝つには、お金という弱点から自由にならなければいけない。韓国社会の甲乙争いを反映したこの映画で、観客はもちろん乙の側だった。リュ・スンワン監督は女優カン・スヨン(釜山国際映画祭の執行委員長)が私的な場で言っていた言葉を聞き流さず、映画に取り入れた。223票。カン・スヨンに借りを作った。
■1位「呆れてものも言えないね」
名セリフ1位も『ベテラン』が獲得。財閥御曹司チョ・テオは、トラック運転手(チョン・ウンイン)が420万ウォンの賃金未払いのため、1人デモをしたという事実を知り、「呆れてものが言えないね」と愚痴をこぼす。なぜ事を大きくするのかという苛立ちだ。観客はこのセリフに大量票(691票)を投じた。マックスムービーのパク・ヘウン編集長は「1341万人の観客を集めた『ベテラン』は、このほかにも、“俺アートボックスの社長だけど”などが話題となるなど、名セリフ生産工場だった」と話した。外国映画の中では、「マナーが人を作る」(『キングスマン』)が344票で1位を獲得した。
パク・ドンギュ記者