海に囲まれたひそかな名所、巨済・クジョラ村

 暖かい南方への旅を考えたとき、頭に浮かぶ場所がある。海に面したドライブコースがある、慶尚南道・巨済島だ。

 巨済島には外島、内島、海金剛に劣らぬ隠れた名所がある。巨済島東部の海岸線に沿ってドライブをするとたどり着く、海辺に面したクジョラ村だ。クジョラ村はくびれたウエストラインのように細いエリアに家が集まっている。村の両側の海にはそれぞれ海水浴場や港がある。

展望台から眺めたクジョラ村の全景。
▲ 展望台から眺めたクジョラ村の全景。

 静かだったこの村が変わり始めたのはおそらく2003年、クジョラ村は「情報化村」に選定されてからではないだろうか。選定後、クジョラ村では超高速インターネットが使えるようになった。その後、住民たちのための生活空間が改善され、伝統菓子体験や陶芸体験ができるようになった。

 おかげで村を訪れる人が増え、静かだった村の雰囲気が一変。次第に活気を帯び始め、内島や外島に出掛けようと船を待つ観光客が、村に滞在するようになった。

壁画でよみがえったクジョラ村の路地の雰囲気。
▲ 壁画でよみがえったクジョラ村の路地の雰囲気。

 村へと観光客を呼び込む名所と言えば、「セッパラム・ソリッキル」と呼ばれる竹やぶの道がある。行き方は簡単だ。村のあちこちに分かりやすく矢印が設置されている。

 ここへ向かう道に差し掛かると、赤毛のアンやパぺポポなど、見慣れたキャラクターが目に入ってくる。かわいらしいキャラクターたちが壁に描かれ、薄暗い路地の雰囲気が明るくなった。壁画で有名な慶尚南道統営市のトンピラン村に比べると規模は小さい。しかし、絵が伝える温かいメッセージはどこにも劣らない。

薄暗い竹藪の道「セッパラム・ソリッキル」。
▲ 薄暗い竹藪の道「セッパラム・ソリッキル」。

 少し壁画を眺めた後、本格的に竹やぶに向かった。入り口では、道の両側にびっしり生い茂る竹の威圧感に驚いた。真っ直ぐかつうっそうと茂った竹が空を半分以上隠し、昼でもかなり暗い。その上、葉の間から寂しげな風の音が聞こえるため、夜に一人で来るのは怖いと思う。なかなか見られない風景なので、少し足を止め、神秘的な竹やぶの様子をカメラに収めてみた。

孝子島とも呼ばれるユンドル島。
▲ 孝子島とも呼ばれるユンドル島。

 竹やぶを過ぎ、オンドクパックム公園に向かう小道の右側、クジョラ海水浴場の方に島が一つ見えた。孝子島とも呼ばれるユンドル島だ。なぜ孝子島と呼ばれるのか調べたところ、母親とともに暮らすユン氏三兄弟が親孝行だったことから付いたのだという。島にまつわる伝説は、ユンドル島を囲む海水浴場や低い尾根からなる風景に劣らず美しかった。

 ユンドル島の様子をカメラに収め、再び公園の方に向かうと、目の前に城壁が現れる。クジョラ城壁だ。ここは、朝鮮王朝中期に敵の攻撃を防ぐため、全方位堡塁が築かれた場所だという。大小の石が見事に積まれていた。

朝鮮王朝中期に築かれたクジョラ城の跡。周辺をゆっくり歩いてみるのもよい。
▲ 朝鮮王朝中期に築かれたクジョラ城の跡。周辺をゆっくり歩いてみるのもよい。

 城壁に沿って歩いていくと、展望台に着く。ここからは、クジョラ村が一望できる。右手には車が駐車してあるクジョラ港が見える。

 村から頂上まで30分ほどの軽い登山を終え下山した後、村を散策してみた。住民たちが共同で品物を販売する市場があり、ここにはカタクチイワシやエビなど、巨済の海でとれた新鮮な海産物が並んでいた。カタクチイワシだけが種類別にたくさん陳列されていたので調べたところ、クジョラ村の特産品として特にカタクチイワシが有名なのだという。生臭いかと思ったら、よく乾燥されているからか、さわやかな海の香りが漂っていた。

クジョラ村の特産品カタクチイワシ。海の香りがする。
▲ クジョラ村の特産品カタクチイワシ。海の香りがする。

 海に囲まれたこの小さな村は、平穏で余裕が感じられた。長い時間かけなくても見て回れるクジョラ村で、思い出をつくってみてはいかがだろう。

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