京畿道水原市にあるのは水原華城だけではない。歴史と伝統を誇る市場に行けば、さまざまな物語や見どころがある。来年「水原華城訪問の年」を迎えるということで、水原華城周辺の伝統市場、工房通りや壁画村を紹介しよう。
水原には市場が22カ所もある。そのうち、水原華城の築城とともに、王がつくった市場として有名な八達門市場に行くと、朝鮮第22代国王・正祖が酒を注ぐ銅像が目を引く。ここを訪れた観光客はよく、正祖の銅像と向かい合って座り、正祖が注ぐ酒を受ける格好をして記念写真を撮影している。
銅像の下方には「不酔無帰」という文字が刻まれているが、これは「酔わないと帰れない」という意味だ。皆が酒を飲めるような、余裕ある豊かな世の中をつくるという、正祖の意向が込められている。
次は、八達門近くのある別の市場に行ってみよう。文化と結びついたモッコル市場では、木曜午前11時半になると、楽しげな音楽とともにラジオ放送が流れる。低迷する市場をよみがえらせようと、市場の人たちが意思疎通を図るため企画したアイデアだ。
韓服(韓国の伝統衣装)で有名な市場もある。韓服店およそ40軒が密集した栄洞市場では、毎年「韓服着こなし選抜大会」が行われる。そのほか、八達門の近くには池洞市場、ミナリグァン市場など九つの市場がある。
本格的に華城周辺散歩に出かける前に、腹ごしらえするため、おいしいものがある池洞市場に向かった。水原だけでなく、すでに全国的に名の知れた池洞市場の「鶏の丸揚げ(または丸焼き)通り」には、何軒もの鶏の丸揚げ店がある。
店によって、少しずつ特色がある。昔ながらの味にこだわった「珍味鶏の丸揚げ」は、衣がやや塩辛く、砂肝が一緒に出てくる。向かいの「ヨンソン鶏の丸揚げ」は、砂肝のほか鶏の足を揚げたものも味わうことができる。「チャンアン鶏の丸揚げ」も似ているが、ニンニクが丸ごと出され、とても香ばしい。
そのほか、スンデ(豚の腸に豚の血や野菜、もち米、春雨などを詰めた食べ物)タウンで味わえる「スンデ・コプチャン(牛の小腸)」がある。まるでソウル・新林洞のスンデタウンをここに移したかのように、数十軒が建ち並ぶ。ピリ辛のタレがからまったスンデと程よい歯ごたえのコプチャンが入った鉄板炒めを食べた後は、チャーハンでしめよう。
食事の後は消化も兼ねて、路地を出て向かいの工房通りへ。行宮洞工房通りは、華城行宮から八達門に向かう途中にある。
およそ30軒の工房のほか、50軒余りの個性的なカフェや飲食店が軒を連ねている。出店に並べられたアクセサリーや木工品、陶磁器などが美しい。
真心込めてつくられた工芸品を眺めながら歩いていると、どこからか香ばしいにおいが漂ってくる。それは、カフェ「華城名家」が販売する焼きいもだった。
カフェの中に入ると、水原華城に関する小物やクッキーが並んでいる。ここで販売しているオーガニッククッキーには、カボチャ味の八達門クッキーや緑茶味の長安門クッキー、ナツメやトックリイチゴ味の華西門クッキー、丹青(韓国の宮殿・寺院に描かれる青、赤、黄色、白、黒の文様)模様クッキーなどがあり、さまざまな味だけでなく華城の物語を楽しめる。
工房通りと同様、最近観光客がよく訪れる場所がある。それは、行宮洞壁画村だ。ここは、工房通りや市場の方から、水原川に沿って華虹門方面に向かったところにある。決して広い場所ではなく、華やかとも言えない。しかし、小さく静かなエリアのあちこちに、作家や住民たちの素朴な感性が込められている。
壁画村は、地域の住民たちによる自発的な参加で始まった。個人の才能で地域をよみがえらせようという住民たちの努力が、今の心温まる村をつくった。水原を訪れたら、華城だけでなく、その周辺で出会う住民たちの温かさを感じてほしい。