「プロ野球に何の権利があって、ファン・ジョンウムがきれいになるのを止めるのか」
MBCは10月14日、韓国プロ野球準プレーオフの中継により、ファン・ジョンウム主演のドラマ『彼女はキレイだった』の放送を休み、ひどい目に遭った。放送休みの知らせに、抗議の書き込みが1万5000件ほど寄せられた。結局、1週間後の21日、MBCはプレーオフの中継をあきらめた。『彼女はキレイだった』のパワーに押されたわけだ。
4.8%(ニールセンコリア調べ、以下同)でスタートした『彼女はキレイだった』の視聴率を16.7%まで引き上げ、水木ドラマの強者にしたのはファン・ジョンウムだ。誰も異議を唱えないほど脂が乗った演技力のためだ。「いくら扮装してもファン・ジョンウムがブスになるはずないのに、本当にブスのような演技をする」。視聴者掲示板にはファン・ジョンウムの演技をたたえる書き込みが相次いだ。
『彼女はキレイだった』は典型的なロマンチック・コメディー。千辛万苦を重ねた末にファッション誌のインターンとして入社した女性が、昔はおとなしくぽっちゃり体型だったがイケメンになって戻ってきた初恋の男性と紆余(うよ)曲折の末に結ばれるという物語だ。ありふれたストーリーに息を吹き込んだのがファン・ジョンウムの演技だ。ふやけたラーメンのようなパーマヘアにそばかすだらけの顔。黒いズボンに白い靴下という、おしゃれとは言えないいでたちで転倒したり、時には動物のような奇妙な声を発する。ドラマを企画したMBCのハン・ヒ・チーフプロデューサーは「ファン・ジョンウムはスターになりたいというより、視聴者に自分の演技でサービスしたいという考えを持っている女優」と語った。「視聴者の目はだませないことを知っている女優と言えるだろう。いくら扮装してもブスになり切るのは限界があるということを知っているから、駆け回り、声を張り上げ、鼻水を流す演技をはばかりなくしながら、真実性を見せようと努力しているのだ」
ファン・ジョンウムは2002年、アイドルグループSugarのメンバーとして芸能界にデビュー。さほど人気を集めることなく、2年でグループを脱退し、女優に転向した。最初は演技を酷評されたが、それをひっくり返すチャンスが2009年に訪れた。シチュエーション・コメディー『明日に向かってハイキック』(MBC)で、ファン・ジョンウムは無知で分別のない地方大学の学生役を演じ、思い切り崩れた演技を見せた。男装したり、面白おかしい演技をしたり、海辺で泥酔し、海藻と一緒に転がっているシーンもこなした。
「演技者には二つの種類がある。自分を消し去り、キャラクターに同化する演技をしてうまくいく人と、あらゆる人物に自分を吹き込む人。ファン・ジョンウムは後者に当たる」。ファン・ジョンウムに演技を教えたアン・ジウン氏は「自分がうまくできる演技を発展させ『ファン・ジョンウム印の演技』というブランドを完成させたようだ」と語った。ファン・ジョンウムは女優としての弱点である鼻声、不安定な発声が問題視された。しかし、その点を活用し、ただきれいなだけのヒロインではなく、突飛で間抜けな姿を愛らしく見せられるように発展させたのだ。過去のドラマ『キルミー・ヒールミー』や『私の心が聞こえる?』のようなケースがまさにそうだ。演技力も次第に向上している。愛する恋人に裏切られ、刑務所にまで入った悲運のヒロイン役を演じた『秘密』では、笑える部分など1%もない人物を完璧に演じた。『秘密』でファン・ジョンウムの父親役を演じたカン・ナムギルは「コミカルな演技をよくしている演技者は、真面目な演技をするときとても苦労するが、ジョンウムにはそういう点が全くないようだ。発声や呼吸のような基本的なスキルもだんだん上達しているから、今後演技の幅がいっそう広がるだろう」と語った。
「僕が見た演技者のうち、瞬発力と融通性が最も優れている」。『彼女はキレイだった』でファン・ジョンウムと共演したSUPER
JUNIORのシウォンはそう話した。シウォンは「僕の役は漫画のように弾けた演技が多く、合わせるのが簡単ではないが、それを完璧に受け入れてくれる。相手役として、信頼し任せられる仲間」と語った。シウォンだけではない。視聴者たちは最近、ファン・ジョンウムを信じ、その演技を楽しんで見ている。