アイドル歌手のコンサートは一種の「株主総会」だ。ファンはここで、自分の愛とお金を投資した歌手への忠誠を確認し、歌手はこれまで積み重ねてきた成果を総動員したショーを繰り広げる。10月10日、ソウル市九老区の高尺スカイドームで、人気アイドルグループEXOのコンサートが開催された。事実上、ファンミーティングのようなこのコンサートは、韓国のアイドル産業と文化の現状を推し量れる場だった。
■アイドルを通じてコミュニケーションを図る10代
「ここで戦争でも起きたのか」
10年前から高尺スカイドームの近くに住んでいるというキム・ガンホ氏(45)が、近くの大手スーパーの女子トイレに行列ができているのを見て尋ねた。そのうち数人の女性は男子トイレに駆け込んだ。高尺スカイドーム一帯に10-20代の女性2万2000人が一挙に押し寄せ、周りのコンビニ、軽食店などが特需を味わった。
EXOのコンサートは、韓国初のドーム球場である高尺スカイドームで行われた初イベントだった。収容人数2万人以上の同所を埋め尽くすことができるアイドルは、EXOやBIGBANGくらいだ。チケットは前売り開始1秒で完売となり、闇チケット価格は最高50万ウォン(約5万円)まで跳ね上がり、プレミアが付いた。EXOの所属事務所SMエンターテインメント(以下、SM)は闇チケットを防ぐため、チケット料金を5万5000ウォン(約5500円)に統一し座席を無作為に割り当てたが、根絶するのは難しかった。会場を訪れたキム・ソミンさん(16)は「ファンの間で、公演に行った回数によってランクが分かれる」と話した。
会場を訪れたファンは、来られなかったファンにソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じてコンサートの状況をリアルタイムで中継する。この日もEXOのトークやセットリストなどがツイッターのリアルタイムの検索ワードランキングにランクインした。音楽評論家のキム作家は「アイドルのファンは、今や10-20代にとってスマートフォン(多機能携帯電話端末)と同様に不可欠なサブカルチャー。同じアイドルを好きな人同士、そのアイドルを通じてコミュニケーションを図り、アイデンティティーを形成する」と話した。EXOのファンの間で知られる、別名「EXO用語辞典」には約80のワードがある。ファン同士、これをどのくらい知っているかで「ファン心」を試す。