いにしえの蘇莱浦を訪ねて時間旅行へ /仁川

 蘇莱浦はかつて仁川(現・仁川広域市)と始興(同・京畿道始興市)を結ぶ小さな渡し場だった。1930年代には塩田や魚市場ができ、水原(同・京畿道水原市)と仁川を結ぶ狭軌列車路線「水仁線」が通るようになった。海路に代わる新たな陸路が誕生したのだ。しかし、狭軌列車は利用客が徐々に減少、95年に運行が中止された。

 現在の蘇莱浦にはかつての姿をほうふつとさせる空間がある。狭軌列車を復元した「蘇莱歴史館」、塩田が体験できる「蘇莱湿地生態公園」、市場の商人たちの活気が感じられる「蘇莱魚市場」だ。

蘇莱歴史館には仁川-水原間を往復した狭軌列車が復元されている。
▲ 蘇莱歴史館には仁川-水原間を往復した狭軌列車が復元されている。

■いにしえの蘇莱浦がよみがえる「蘇莱歴史館」

 「蘇莱歴史館」は、2012年に復活した現在の水仁線・蘇莱浦駅2番出口から右へ、歩いて10分ほどの所にある。同年に建てられた歴史館には蘇莱浦のいにしえの姿が復元されている。

 観覧コースは歴史館2階にある「蘇莱駅待合室」からスタート。待合室には昔懐かしいだるまストーブや、風呂敷包みを持ってベンチに座るおばあさんの人形がある。タイムマシンから飛び出したかのようにリアルに作られたおばあさんの人形は壊れる恐れがあるので、目で楽しむだけにして手では触れないように。

蘇莱駅待合室(右上)や水仁線工事現場(下)など、昔懐かしい蘇莱浦の様子が再現されている蘇莱歴史館(左上)。
▲ 蘇莱駅待合室(右上)や水仁線工事現場(下)など、昔懐かしい蘇莱浦の様子が再現されている蘇莱歴史館(左上)。

 その次には「蘇莱」という地名の由来や歴史が分かる展示室があり、旧・水仁線建設の様子を示した模型、蘇莱塩田を再現した展示室へとつながる。中でも見逃せないのが、1995年まで水原と仁川の間を行き来していた実物大の狭軌列車だ。

 この列車に乗ると、高齢の入場者は昔を懐かしみ、若い入場者はつかの間ながら「タイプスリップ体験」ができる。蘇莱歴史館は毎週月曜日・旧正月と秋夕(中秋節)・1月1日を除いて常時入場可。入場料も大人500ウォン(約50円)、生徒・学生・軍人300ウォン(約30円)、子ども200ウォン(約20円)とお手頃価格で入りやすい。

■塩田と干潟で体験学習「蘇莱湿地生態公園」

 蘇莱歴史館を見学した後は、展示館に再現された塩倉庫が実際に見られる「蘇莱湿地生態公園」へ。歴史館から歩いて20分ほどの生態公園は、かつて韓国最大規模の天日塩生産地だった蘇莱塩田があった場所だ。現在はかなり縮小されているが、約4万平方メートル(サッカー場4面分)の塩田が今も広がる。

蘇莱湿地生態公園には、塩田(右上)や干潟(右下)といった生態学習場と、風車の見える遊歩道(左)がある。
▲ 蘇莱湿地生態公園には、塩田(右上)や干潟(右下)といった生態学習場と、風車の見える遊歩道(左)がある。

 この塩田では現在も塩が生産されており、入場者が直接塩田に入ることはできないが、その工程を観察・体験できる。さらに、塩倉庫に積まれている天日塩の味見も可能だ。

■過去と現在が交じり合う「蘇莱鉄橋&蘇莱魚市場」

 旅のラストは旧・狭軌列車が行き来していた「蘇莱鉄橋」と、新鮮な海の幸がいっぱいの「蘇莱魚市場」。蘇莱鉄橋は現在、列車は通っていないが、徒歩で渡れるようになっている。鉄橋の横には復活した現・水仁線の電車が往復していて、異色の風景を織りなしている。

 鉄橋から下を見ると干潟が広がり、その間を海水がゆったり流れている様子が目に入る。その脇には干潟に停泊している漁船や昔の姿そのままの蘇莱魚市場がある。

徒歩で渡れるようリニューアルされた旧・蘇莱鉄橋(上)と、活気に満ちた蘇莱魚市場(下)は近いので寄りやすい。
▲ 徒歩で渡れるようリニューアルされた旧・蘇莱鉄橋(上)と、活気に満ちた蘇莱魚市場(下)は近いので寄りやすい。

 蘇莱鉄橋の脇にある蘇莱魚市場は、新鮮な魚介類や塩辛の種類が豊富で、中でも近くの蘇莱塩田で生産された良質な天日塩と新鮮な海の幸が出会って生まれた塩辛で有名だ。イワシの塩辛、イイダコの塩辛、カニの塩辛などは、キムジャン(越冬用のキムチ漬け)を行う11月ごろになると大勢の買い物客でにぎわうほど人気。市場のあちこちから聞こえる商人たちのにぎやかな声をBGMに見物しているうちに、いつの間にか両手が荷物でいっぱいになるかも…?

蘇莱魚市場は新鮮な海の幸と塩辛が豊富で、観光客や買い物客でにぎわっている。
▲ 蘇莱魚市場は新鮮な海の幸と塩辛が豊富で、観光客や買い物客でにぎわっている。

 蘇莱歴史館、蘇莱湿地生態公園、蘇莱魚市場は全て徒歩20分圏内にあるため、1回の旅で巡ることができる。また、水仁線の蘇莱浦駅が利用できるので交通も便利だ。過去と現在が交じり合う蘇莱浦で懐かしい時代を満喫、さらに珍しい体験や新鮮な海の幸を味わってはいかが?

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