インタビュー:本格ノワールに挑戦したキム・ヘス

映画『チャイナタウン』(4月29日公開)主演のキム・ヘス
暗黒街を支配する女性役「美しくはないけれどワクワクする演技」

▲映画『チャイナタウン』で、チャイナタウンを支配する冷酷な女性を演じた女優キム・ヘス。/写真提供=CGVアートハウス
▲ ▲映画『チャイナタウン』で、チャイナタウンを支配する冷酷な女性を演じた女優キム・ヘス。/写真提供=CGVアートハウス

 女優キム・ヘス(44)は「ぎこちない経験だった」と振り返った。「煙の臭いが漂うセットに足を踏み入れるたび、全身に戦慄が走りました。撮影前、2、3時間ほどメークをしているときも、妙な興奮がこみ上げてきました。現場では、むしろそのような興奮や戦慄のようなものを抑えて演じていた気がします」

 『タチャ イカサマ師』(2006年)では梨花女子大出身のイカサマ賭博仕掛け人、チョン・マダムを演じた。『10人の泥棒たち』(2012年)では海千山千のセクシーな金庫破りペプシ、『観相師-かんそうし-』(2013年)では漢陽(現在のソウル)の政界を牛耳る芸妓だった。女優としては稀にみるカリスマ性を持ち、大胆なイメージチェンジを繰り返してきたキム・ヘスだが、犯罪映画『チャイナタウン』(ハン・ジュニ監督)での演技は「ワクワクすると同時に怖さも感じる挑戦でした」と語った。

 今回の映画で、キム・ヘスは仁川のチャイナタウンを支配する正体不明の女性、「母」役を演じた。顔中にしみやそばかすを描き、髪はほうきのようにボサボサにした。お腹とお尻には肉襦袢を入れ、肉付きをよくした。常に自分を美しく見せたい女優にとっては、苦しい選択だっただろう。「出演を決める前、『私に演じることができるだろうか』と確信が持てず、悩みました。でも、いざ撮影が始まってからは、どのように見られるかということは一度も心配しませんでした。そのような心構えで演じられるキャラクターに出会ったこと自体、女優としてとてもラッキーだと思います」

 同作は、韓国映画では珍しい本格ノワール。陰鬱なトーンや暗い映像で、犯罪と暴力の世界を描く。張りつめた緊張感が重要な要素だ。主演俳優は表情や動きで、ピンと張られた弓弦のように緊張感をキープしなければならないという責任が伴う。キム・ヘスが演じる「母」が、日差しの差し込む窓を背にたばこの煙を吐き出したとき、また警察幹部の前でアルコール度数の強い酒を一気に飲み干し、躊躇なく人の体を刃物で傷つけたとき、彼女が放つエネルギーは強烈で圧倒的だ。捨てられた子どもたちを組員として育て、むごい犯罪を指示しても顔色一つ変えない。キム・ヘスは「どうすればチャイナタウンのどこかで生きている人のように感じられるか、ということに集中しました。そのような人生以外、彼女からは感じられなかったのです。愛情も憎悪も、普通の人の日常的な基準とはまるで違ったということです」と語った。

 清純派女優の代名詞からグラマラスな健康美人に、そして今では映画界を代表する女優になったキム・ヘスは「私の名前が常に額面通りの自分の姿より、イメージが先行していたのが不自由でもありました」と打ち明けた。「表面的に見えるものに比べ、未熟な部分も多く、初めは皆さんが期待するほど応えられなくても、少しずつ良くなってきたので、今のところ作品に呼んでくださっているのではないでしょうか」

イ・テフン記者
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